インフルエンザ脳症の発症因子の解明と治療及び予防方法の確立に関する研究

文献情報

文献番号
200400608A
報告書区分
総括
研究課題名
インフルエンザ脳症の発症因子の解明と治療及び予防方法の確立に関する研究
課題番号
-
研究年度
平成16(2004)年度
研究代表者(所属機関)
森島 恒雄(岡山大学大学院 医歯学総合研究科)
研究分担者(所属機関)
  • 玉腰 暁子(名古屋大学大学院医学研究科)
  • 横田 俊平(横浜市立大学医学部)
  • 水口 雅(東京大学大学院医学系研究科)
  • 布井 博幸(宮崎大学医学部)
  • 富樫 武弘(市立札幌病院)
  • 佐多 徹太郎(国立感染症研究所)
  • 市山 高志(山口大学医学部)
  • 岡部 信彦(国立感染症研究所)
  • 中村 祐輔(東京大学医科学研究所)
  • 田代 眞人(国立感染症研究所)
  • 山口 清次(島根大学医学部)
  • 塩見 正司(大阪市立総合医療センター)
  • 市川光太郎(北九州市立八幡病院)
  • 細矢 光亮(福島県立医科大学)
  • 木村 宏(名古屋大学医学部)
  • 奥野 良信(大阪府立公衆衛生研究所)
  • 河島 尚志(東京医科大学)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 新興・再興感染症研究
研究開始年度
平成15(2003)年度
研究終了予定年度
平成17(2005)年度
研究費
22,950,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
インフルエンザ脳症は致命率が30%と重篤な疾患でありながら、早期診断法や完全な治療法が確立していない。また、本症の発症要因およびワクチンの脳症予防効果などは不明である。これらの点を明らかにし、本症の「診療ガイドライン」を作成する。
研究方法
本症の症例の解析、診療ガイドラインの作成に重要な項目を検討した。ケースコントロール研究により、ワクチンの脳症予防効果を調査した。発症要因の研究として、coding領域全てについてSNPsを用いた異常部位の検索やDNAマイクロアレイによる解析が進行中である。又、国外共同疫学調査を実施し、本症の国際的広がりを調査した。
結果と考察
1 本症の臨床像、検査所見(血液・尿検査及び脳波・画像診断など)、病理、病態(サイトカインの異常、血管内皮の障害、apoptosisなど)を明らかにした。これらの知見は現在小児科診療の場で広く用いられている。
2 発症要因の研究では、脂肪酸のβ酸化異常症など、複数の異常が推定された。SNPsを用いて全てのcoding領域を解析中である。又、DNAマイクロアレイ法を用いた解析も進行中である。現在、必要な症例の約60~70%が集まり、今後結果をまとめる予定である。
3 重症例に対する治療(ステロイドパルス・大量グロブリン・シクロスポリン療法など)を検討してきた。その結果、致命率を低下させることができた。(約30%から約15%へ)また、早期診断法や重症化につながる症状や検査所見をまとめ、情報を公開した。
4 米国などから本症の報告が増加し、脳症が世界的に認識されるに至った。我が国の治療法などの結果を米国CDCなどの依頼に応じ連絡するなど、研究成果が国際的にも貢献している。
5 ワクチンの脳症予防効果は、インフルエンザ感染が防げれば脳症の発症はないが、一旦インフルエンザを発症すると脳症への進展を防ぐ効果は低いことが推定されている。次年度も調査を継続する。
結論
初期救急から三次救急重症例の治療まで含んだ診療ガイドライン作成に向け、研究班で最終チェックの段階であり、来シーズン前の完成と情報の公開を予定である。また、今までの研究成果から強く推測される遺伝子多型について、SNPsやDNAマイクロアレイにより解析を実施している。異常部位を明らかにし、その機能を解析し、診断キットを作成することにより、ハイリスクの子どもの発症前診断が可能となる。

公開日・更新日

公開日
2005-06-24
更新日
-