SARSの感染・発症・重症化の分子機構

文献情報

文献番号
200400603A
報告書区分
総括
研究課題名
SARSの感染・発症・重症化の分子機構
課題番号
-
研究年度
平成16(2004)年度
研究代表者(所属機関)
笹月 健彦(国立国際医療センター)
研究分担者(所属機関)
  • 徳永 勝士(東京大学)
  • 慶長直人(国立国際医療センター)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 新興・再興感染症研究
研究開始年度
平成16(2004)年度
研究終了予定年度
平成18(2006)年度
研究費
32,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
SARSの感染・発症・重症化には宿主側の要因が深く関与するものと考えられているが、その機構についてはほとんど解明されていない。候補となる遺伝子の変異検索と関連解析、関連分子の機能解析により、SARSの病態解明をめざす。
研究方法
2003年、ベトナムにおいてSARSと診断された62例のうち、書面による同意を得られた44例、SARS患者との接触があったがSARSを発症しなかった病院スタッフ103例、別の病院のスタッフ50例を解析した。血球からゲノムDNAを抽出した。遺伝子多型タイピングは、RFLP法、SSCP法、直接シークエンス法を併用した。
結果と考察
アンジオテンシン変換酵素 (ACE1)の挿入欠失多型とSARS重症化との関連性を検討したところ、非低酸素血症群と比較して肺傷害に伴う低酸素血症群では、欠失アリルの頻度が有意に高かった。ロジスティック解析の結果、独立因子として、ACE1欠失変異の関与が推定された。血管内皮に発現するACE1によって生成されるアンギオテンシンⅡは血管内皮の傷害と関連して、肺の重症化に関与している可能性が考えられる。
次に、SARSウイルスの宿主側レセプターであるACE2遺伝子には、新たなバリアントが同定された。しかしその遺伝子変異とSARS発症との関連は否定的であった。
インターフェロン誘導抗ウイルス遺伝子群を候補として、OAS-1遺伝子の、複数のSNPsが、SARSの発症ないし感染と有意な関連を示した。さらに、MxA遺伝子プロモーター領域のSNPはSARS患者の低酸素状態の有無と関連を示した。OAS-1とMxAはそれぞれSARSにおける疾患感受性と重症化に影響を与えているものと推測された。
さらに、ウイルスに対する免疫応答の検討に用いられるdsRNA刺激により、活性化マクロファージが、NKG2Dリガンドの一つRAE-1を発現することが明らかとなった。
結論
我々は、ベトナムとの国際共同研究によって、SARSの感染・発症・重症化に関連する遺伝子多型を明らかにした。さらにSARSレセプターACE2の新たなエクソンと新たなSNPsの発見は、今後、重要な情報を提供するものと考えられる。SARSと非HLA遺伝子との関連を検討し有意な結果を得たのは、本研究が世界で初めてであり、その結果は、すでに3報の論文として、国際誌に報告した。

公開日・更新日

公開日
2005-04-20
更新日
-