ペプチド抗体によるSARS(重症急性呼吸器症候群)診断の迅速化

文献情報

文献番号
200400599A
報告書区分
総括
研究課題名
ペプチド抗体によるSARS(重症急性呼吸器症候群)診断の迅速化
課題番号
-
研究年度
平成16(2004)年度
研究代表者(所属機関)
伊東 恭悟(久留米大学(医学部))
研究分担者(所属機関)
  • 笹月 健彦(国立国際医療センター)
  • 七條 茂樹(久留米大学(医学部))
  • 切替 照雄(国立国際医療センター研究所)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 新興・再興感染症研究
研究開始年度
平成16(2004)年度
研究終了予定年度
平成18(2006)年度
研究費
15,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
患者特異的に長期間免疫応答が持続する抗体により認識されるSARSウイルスの構造蛋白エピトープを同定し、これを用いた迅速診断法を確立する。なお、本研究はベトナム保健省の倫理委員会及び国立国際医療センター倫理委員会の承認の基に実施した。
研究方法
台湾人SARS感染初期血清、ベトナム健常人、同接触非感染者および同SARS感染後6ヶ月患者血清を用いた。ペプチド:SARS-CoV構成タンパク(spike(S), nucleocapsid(N), membrane(M), and envelop(E))由来の15merペプチドをそれぞれ125、43、22、7種類(合計197種類)合成した。抗体測定法:抗体は、Luminexを用いたflowmetryで行った。実験操作は国際医療センター高度安全管理室内で行った。
結果と考察
SARS急性期感染患者血清で197種類のうち42種類のペプチドが陽性であった。なかでもS791および N161が最も高い測定値を示した。42種類のペプチドのうち感染6ヶ月後患者血清で有意に認識される3種類 (S791, M207, N161) のペプチドを同定した。本研究では微量の血清量で抗体の測定が可能で、最大100種類の抗原に対する抗体が同時に測定できる、Luminexを用いたflowmetry法を選択した。Nucleocapsid(N)に対する抗体は、急性期で最も高くその後次第に減少するという報告がある。一方、本研究で同定された3種類のペプチドに対する抗体は、6ヵ月後でS791, M207, およびN161 に対してそれぞれ51%、60%および42%といずれも高い陽性率を示していることからペプチドに対する抗体測定の有用性が示唆された。しかしながら抗体の検出がSARS感染を診断する上でどのような意味を持つのか今後慎重に解析し検討する必要がある。
結論
各種SARSウイルス由来エピトープに対する免疫応答が、個々の患者により異なったり、感染後の経時的な応答が異なったりすることから、各エピトープに対する抗体を測定することが患者の予後との関連などを解析する上で重要な情報を与えるものと考えられた。また、本研究で同定した長期持続免疫抗体が認識するエピトープは、感染直後から惹起されることから、診断のための抗原としても有用であると考えられた。

公開日・更新日

公開日
2005-03-31
更新日
-