SARSコロナウイルス検査法の精度向上及び迅速化に関する研究

文献情報

文献番号
200400598A
報告書区分
総括
研究課題名
SARSコロナウイルス検査法の精度向上及び迅速化に関する研究
課題番号
-
研究年度
平成16(2004)年度
研究代表者(所属機関)
森川 茂(国立感染症研究所ウイルス第一部)
研究分担者(所属機関)
  • 北村 義浩(東京大学医科学研究所)
  • 森田 公一(長崎大学熱帯医学研究所)
  • 松浦 善治(大阪大学微生物病研究所)
  • 奥野 良信(大阪府立公衆衛生研究所感染症部)
  • 田代 眞人(国立感染症研究所ウイルス第三部)
  • 棚林 清(国立感染症研究所獣医科学部)
  • 長谷川 秀樹(国立感染症研究所感染病理部)
  • 納富 継宣(栄研化学株式会社生物化学研究所)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 新興・再興感染症研究
研究開始年度
平成16(2004)年度
研究終了予定年度
平成18(2006)年度
研究費
50,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
SARSは1類感染症に指定されている。実験室感染を回避できるウイルス培養を必要としない血清診断系の開発を行う。他の呼吸器感染症との鑑別診断も行う。初年度は、組換え抗原による抗体検出法の開発、SARS-CoVを用いない安全なウイルス中和抗体測定法の開発、LAMP法によるSARS-CoV検出の至適化と改善、サルへのSARS-CoV感染系の解析、ACE2-トランスジェニックマウスの作製を行う。
研究方法
1)血清診断法:組換えN蛋白を用いたELISA法を作製した。また、S蛋白を被ったVSV-シュードタイプ、ACE2を被ったシュードタイプバキュロウイルスを作製し、中和抗体測定法を開発した。イムノクロマト法を開発するために抗体を作製した。2)遺伝子検出法:LAMP法の有用性を検討した。また、感度向上のための基礎検討を行った。鑑別診断用LAMP法の基礎検討を行った。3)モデル動物系:SARS-CoV感染サルにおけるウイルスの動態と免疫応答を解析した。また、ヒトACE2発現トランスジェニックマウスの作出を試みた。
結果と考察
1)血清診断法:組換えN蛋白を用いた血清診断系では、他のコロナウイルスとホモロジーの高い領域を除くことで特異性が高められた。VSV-シュードタイプを用いて中和抗体測定が10時間で可能になった。ACE2を被ったシュードタイプバキュロウイルスも作製できた。迅速なイムノクロマト法に用いる構造蛋白のペプチド抗体を作製した。2)遺伝子検出法: LAMP法はRT-PCRより迅速で高感度であった。また、RNA抽出法等の改良により感度が向上できた。迅速鑑別用LAMP法の基礎データを得た。3)モデル動物系:SARS-CoV感染サルでは、咽頭・直腸拭液からウイルス遺伝子が検出され、感染10日目以降に抗体が検出された。トランスジェニックマウス3系統でACE2発現を確認した。これらは、より迅速で安全な実験室診断の確立につながるものである。
結論
SARS-CoVの培養系を使用しない血清診断系により、実験室感染のリスクを回避でき、迅速に抗体測定が可能である。LAMP法は極めて高感度であるが、検出感度の向上によりさらに確実な診断が可能となる。感染サル材料を用いて、今後開発、改良された検査法の精度、感度検定が可能である。トランスジェニックマウスは、より有効なモデル動物系の開発につながると思われる。

公開日・更新日

公開日
2005-06-15
更新日
-