SARSコロナウイルスに対するワクチン開発に関する研究

文献情報

文献番号
200400596A
報告書区分
総括
研究課題名
SARSコロナウイルスに対するワクチン開発に関する研究
課題番号
-
研究年度
平成16(2004)年度
研究代表者(所属機関)
田口 文広(国立感染症研究所ウイルス第3部)
研究分担者(所属機関)
  • 横田恭子(国立感染症研究所免疫部)
  • 岡田全司(国立療養所近畿中央病院臨床研究センター)
  • 石井孝司(国立感染症研究所ウイルス第2部)
  • 黒澤良和(藤田保健衛生大学総合医科学研究所)
  • 山本典生(東京医科歯科大学)
  • 山田靖子(国立感染症研究所動物管理室)
  • 宝達 勉(北里大学獣医畜産学部)
  • 池田秀利(動物衛生研究所感染病研究部 )
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 新興・再興感染症研究
研究開始年度
平成16(2004)年度
研究終了予定年度
平成18(2006)年度
研究費
50,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
重症急性呼吸器症候群(SARS)は、コロナウイルス(SARS-CoV)による致死率の極めて高い新興感染症であり、予防治療法は未だ確立されていない。本研究の目的は、 SARSの病態を把握し、SARSに対する有効で安全なワクチン及び抗ウイルス剤の開発のための基礎的研究である。
研究方法
ウイルスはSARS-CoV(HKU39849とFrankfurt-1株)猫伝染性腹膜炎ウイルス(FIPV)を用いた。SARS-CoVの増殖、力価測定はVeroE6細胞で行った。SARS-CoV遺伝子をクローニングし、大腸菌、哺乳動物培養細胞で発現するため各々のベクターに挿入した。また、SARS-CoV遺伝子を含む組み換えワクシニアウイルスDIsを作成した。免疫にはBALB/c,C57Bl,SCID-PBL/huマウスを用いた。SARS-CoV受容体ACE2遺伝子分離にはフェレットを、FIPV感染にはSPF猫を用いた。
結果と考察
SARS-CoV増殖はプロテアーゼにより著しく亢進し、肺炎重症化でのプロテアーゼ関与が示唆された。マウスを用いた不活化ワクチン、DNAワクチン、組み換えワクチン研究では、SARS-CoVに対する細胞性及び液性免疫が惹起され、マウス体内のウイルス増殖を抑える抵抗性を賦与できたワクチンもあった。抗ウイルス剤としては、2種類の薬物が培養細胞レベルでの抗SARS活性を示した。また、フェレットがSARS感受性ACE2を持つことが判明し、動物モデルとしての有用性が期待される。FIPV感染における抗体依存性感染増強の発生機序でFc受容体の関与が明らかにされ、SARSの病態発生の基礎的研究に貢献した。本年度は、 SARSワクチン開発に向けて期待できる結果が得られた。今後は、ワクチン開発と共に動物モデルを用いたワクチン,抗ウイルス剤の有効性,安全性の評価システムの確立を目指したい。
結論
本研究ではSARSの重症化にプロテアーゼが関与すること,マウスを用いた不活化ワクチン、DNAワクチン、組み換えワクチンが液性,細胞性免疫を誘導することが明らかにされた。また、抗ウイルス剤としても2薬物が発見された。フェレットが動物モデルになる可能性が示唆され、FIPVの抗体依存性感染増強へのFc受容体の関与が示された.これらの成果をもとに,動物でのワクチン評価システムの確立が期待される。

公開日・更新日

公開日
2005-04-20
更新日
-