ポリオ野生株ウイルスの封じ込め対策に関する研究

文献情報

文献番号
200400594A
報告書区分
総括
研究課題名
ポリオ野生株ウイルスの封じ込め対策に関する研究
課題番号
-
研究年度
平成16(2004)年度
研究代表者(所属機関)
宮村 達男(国立感染症研究所ウイルス第二部)
研究分担者(所属機関)
  • 清水 博之(国立感染症研究所ウイルス第二部)
  • 吉田 弘(国立感染症研究所ウイルス第二部)
  • 小池 智(東京都神経科学総合研究所微生物研究部門)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 新興・再興感染症研究
研究開始年度
平成16(2004)年度
研究終了予定年度
平成18(2006)年度
研究費
10,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
日本も含む西太平洋地域では、2000年にポリオフリーの宣言がなされ,地球レベルの野生株ポリオ根絶も間近となった。計画の最終段階においては、1)インド、ナイジェリア等に残された流行地域でのポリオ根絶の達成, 2)ワクチン由来変異株ポリオウイルスによる流行の阻止、3)野生株ウイルスの実験室封じ込めと廃棄、等を解決していく必要がある。本研究班は、我が国でのポリオウイルス野生株保管施設のリストアップ、それに引き続く野生株の廃棄と移動およびそれらの確認作業の具体案の策定を目的とする。また、野生株根絶後に問題となるワクチン株流行に関するリスクアセスメントについて、ポリオウイルスの封じ込め対策の一環としての研究を行う。
研究方法
I. 野生株ポリオウイルス保管施設リストの完成。
II.保管施設におけるウイルスの封じ込め、廃棄、移動に関する具体的方法の検討。
III. OPV由来株によるポリオ流行の可能性とメカニズムについての研究。
(1) OPV由来ポリオ株の遺伝子解析。遺伝子組み換えのターゲットを決定し、その病原性および伝播能を解析する。
(2) ポリオウイルスレセプター発現トランスジェニック (Tg) マウスをI型IFNレセプターノックアウトマウスと交配し、変異組換えウイルスの経口感染による感染伝播経路、神経毒性発現機構を解析する系を構築する。
(3) ポリオウイルスのsilent circulationについて、感度のよい環境サーベイランスを通じ追跡する。
結果と考察
(1)日本における野生株ポリオウイルスは31施設に保管されている。
(2)WHOが勧めているGAP-IIに基づき、調査対象とするウイルス株を定義し、対象とする施設を設定し、調査方法、評価方法を定めて体制を整えた。
(3)フィリピン、中国貴州省、ラオスでAFP例から分離されたワクチン由来ポリオウイルス株の遺伝子解析を行った。富山県の健康児から分離されたワクチン由来株の解析も行った。
(4)IFNα/βレセプターをノックアウトしたPVR-Tgマウスではウイルス感受性が増大し、組織特異性に変化が認められた。分離ウイルスの性状、病原性を調べる系が確立した。
(5)環境サーベイランスを通じて、多くのエンテロウイルスの分離された中に、ワクチン由来の2型ポリオウイルスも検出された。
結論
世界ポリオ根絶計画達成の為の必須条件である野生株ポリオウイルス封じ込めを完遂する為の態勢を整えた。野生株ポリオウイルスが地球上から一掃された後の真の根絶が達成されるため、廃止に到るワクチン戦略をたてねばならない。

公開日・更新日

公開日
2005-04-27
更新日
-