文献情報
文献番号
200400593A
報告書区分
総括
研究課題名
輸入真菌症等真菌症の診断・治療法の開発と発生動向調査に関する研究
課題番号
-
研究年度
平成16(2004)年度
研究代表者(所属機関)
上原 至雅(国立感染症研究所 生物活性物質部)
研究分担者(所属機関)
- 亀井 克彦(千葉大学 真菌医学研究センター)
- 菊池 賢(東京女子医科大学医学部・感染症科)
- 槙村 浩一(帝京大学 医真菌研究センター)
- 渋谷 和俊(東邦大学医学部 病院病理学講座)
- 上 昌広(国立がんセンター中央病院 薬物療法部)
- 杉田 隆(明治薬科大学 微生物学教室)
- 鈴木 和男(国立感染症研究所 生物活性物質部)
- 新見 昌一(国立感染症研究所 生物活性物質部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 新興・再興感染症研究
研究開始年度
平成16(2004)年度
研究終了予定年度
平成18(2006)年度
研究費
42,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-
研究報告書(概要版)
研究目的
輸入真菌症の国内発生状況を調査し、我が国固有のヒストプラスマ症およびその起因菌が存在するか否かを調べた。また診断法、真菌検出法、抗真菌剤感受性測定法などの改良および真菌の病原性の解明と薬剤耐性克服をめざした基礎研究の推進を目的とした。
研究方法
輸入真菌症発生状況を調査し、ヒストプラスマについては菌の検出を試み、健常人および感染リスクが想定される集団を対象とした血中ヒストプラスマ抗体調査を実施した。診断法の精度向上をめざすために画像診断、細胞診の改良を行い、市販凍結プレートを用いて薬剤感受性測定法の有効性を検討した。さらに真菌由来の糖たんぱく質による血管炎の初期応答を解析し、薬剤耐性機序についての基礎研究を行なった。
結果と考察
我が国の輸入真菌症(コクシジオイデス症、ヒストプラスマ症)は依然増加傾向にあることが判明した。国内洞窟のコウモリ・グアノの菌相解析を行ったが、ヒストプラスマは検出されず、洞窟探検家血清中から抗体は検出されなかった。従って、我が国の洞窟にヒストプラスマが存在する可能性は低いと考えられた。一方、グアノ中の酵母菌相を解析し、新種を含むTrichosporonが多数分離された。市販凍結プレートによる抗真菌薬感受性法は標準法と比較して遜色なく簡便な方法となることが期待される。呼吸器系細胞診から真菌検出法や菌種の推定法を検討し、推定不能例を20%減少することができた。幹細胞移植患者の晩発性糸状真菌感染としてはアスペルギルスが中心であったが、haloサインを伴うCT所見が晩期アスペルギルス感染で重要な所見であることが分った。真菌由来糖たんぱく質による血管炎には、サイトカインと連動した活性化好中球の活性酸素が血管傷害を起こすことが示唆された。またC. glabrataの薬剤排出ポンプは、リン酸化によって薬剤輸送能が調節されていることが分った。
結論
輸入真菌症発生状況については引き続き注意深い調査が必要である。洞窟入洞後の急性呼吸器症状についてはアレルギー機序を介した洞窟由来Trichosporonの何らかの関与が疑われたが、今後の継続した調査が必要である。迅速診断法の開発および病原性の解明、真菌感染と宿主との相互作用に基づく新しい抗真菌剤の開発が待たれる。これらの研究によって得られた成果は真菌感染症から国民を守るために多大の貢献をするものと考えられる。
公開日・更新日
公開日
2005-04-11
更新日
-