わが国における飲食に起因する経口感染症の被害推計の精密化に関する研究

文献情報

文献番号
200400592A
報告書区分
総括
研究課題名
わが国における飲食に起因する経口感染症の被害推計の精密化に関する研究
課題番号
-
研究年度
平成16(2004)年度
研究代表者(所属機関)
谷原 真一(島根大学医学部 環境保健医学講座公衆衛生学)
研究分担者(所属機関)
  • 畝 博(福岡大学医学部)
  • 中村 好一(自治医科大学医学部)
  • 小林 廉毅(東京大学大学院医学系研究科公衆衛生学)
  • 岡本 悦司(国立保健医療科学院経営科学部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 新興・再興感染症研究
研究開始年度
平成16(2004)年度
研究終了予定年度
平成17(2005)年度
研究費
11,900,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
診療報酬請求明細書(レセプト)などの自動的に集積される情報を活かした、わが国における飲食に起因する経口感染症の被害推計の精密化を行うこと。
研究方法
1)特定の感染症患者数について複数の健康保険組合の被保険者におけるレセプトに記載された診療開始日による時間的変動と医療機関所在地による地理的拡大を把握した。2)1健康保険組合の被保険者における1995年度~2001年度のレセプトを利用して、年齢階級別・月別の腸管感染症罹患率を計算した。また、2001年度について傷病名が腸管感染症のレセプトの調査を行い、レセプトの傷病名および治療行為などの情報から疾患名を推計し集計した。3)1診療所の1年間の電子カルテから、経口感染症関連のカルテを電子検索し疫学的情報および検査内容を調査した。また、米国における経口感染症調査システムの状況を文献及びインターネット等で調査し、わが国のシステムの参考になる点を抽出した。4)国民健康保険の一保険者における1998年~2002年の5月診療分レセプトデータについて、「腸管感染症」に起因する診療実日数および直接医療費の割合を推計した。
結果と考察
1)レセプト傷病名でも感染症の時間的変動を把握する妥当性は十分であることが示された。2)1995年度~2001年度における腸管感染症の罹患率は4.0%~6.5%であり、年度別に大きな変動はなかった。年齢と共に罹患率が低下する傾向と季節による変動が認められた。3)医療機関ごとに電子カルテシステムが異なることが多く、現時点では電子カルテを用いた経口感染症の広域的なデータ収集については実用的ではないと考えられた。4)国民健康保険の一保険者における1998年~2002年の5月診療分レセプトデータによると、診療実日数の0.14~0.29%、医療費の0.089~0.385%が腸管感染症によると推測された。
国立感染症研究所の感染症発生動向調査よりも1か月以上遅れるので、迅速な対策が必要な疾患には十分有効とは言えないが、レセプト情報によって定点サーベイランスの弱点を補完できる可能性を示した。特定の保険者において総点数および診療実日数に「腸管感染症」に起因する直接医療費が推計できた。間接医療費を含めた健康被害状況の推計は今後の課題である。
結論
レセプトに記載された情報が定点医療機関からの届出に基づく統計には無い有用性を持つことと「腸管感染症」に起因する直接医療費の推計法を示すことができた。

公開日・更新日

公開日
2005-04-20
更新日
-