眼疾患に対する遺伝子・細胞治療に関する研究

文献情報

文献番号
200400582A
報告書区分
総括
研究課題名
眼疾患に対する遺伝子・細胞治療に関する研究
課題番号
-
研究年度
平成16(2004)年度
研究代表者(所属機関)
東 範行(国立成育医療センター病院第二専門診療部眼科)
研究分担者(所属機関)
  • 岩田 岳(独立行政法人国立病院機構東京医療センター臨床研究センター)
  • 奥山 虎之(国立成育医療センター病院特殊診療部遺伝診療科)
  • 山田 正夫(国立成育医療センタ研究所成育遺伝研究部)
  • 仁科 博史(東京医科歯科大学難治疾患研究所発生再生生物学)
  • 岡野 栄之(慶應義塾大学医学部生理学教室)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 感覚器障害研究
研究開始年度
平成15(2003)年度
研究終了予定年度
平成17(2005)年度
研究費
15,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
視覚器は他臓器に比べ複雑で、眼疾患で個々の組織に応じた治療が必要である。本研究は、眼組織に特異的に遺伝子や蛋白を発現させ、あるいは細胞移植することによって、組織独自の微細領域の治療を開発する。
研究方法
1)PAX6の転写調節能を解析。DRPLA、REREの転写調節能、選択的スプライス変化を検討。2)OPTN変異体トランスジェニックマウスを作成。3)マウス胎児脳神経幹細胞の分化を観察し、細胞表面抗原を検出。4)マウスES細胞におけるMAPキナーゼとPax6の神経細胞分化誘導に対する影響を検討。5)マウス神経網膜で外的因子CNTFが下流シグナル伝達機構を介し、視細胞ロドプシンの発現を抑制するかを解析。6)マウス骨髄間葉細胞をムコ多糖症モデルマウスの角膜実質に移植し、混濁の治療効果を検討。
結果と考察
1)PAX6のトランス転写活性化機構を推定した。神経細胞でDRPLAは転写を抑制し、REREは弱い転写抑制を示す。DRPLA配列間に選択的スプライスがあり、転写産物割合が時間・空間的に変化する。2)OPTN変異体トランスジェニックマウスでは神経乳頭の陥凹があり、正常眼圧緑内障の発症機序解明に役立つ。3)神経幹細胞は、ニューロン、アストロサイト、オリゴデンドロサイトに分化し、アロ移植として有用である。4)MAPキナーゼ系がES細胞から神経細胞分化誘導を抑制し、PAX6アイソフォ−ム5a型が強い神経細胞分化誘導能をもつ。5)Notchは視細胞分化に先駆けて不活性化し、それに関与するNumbは同部同時期に発現した。Notch導入でミューラー細胞が増加し、介在ニューロンへも分化し、視細胞分化は抑制された。Numb導入は視細胞に分化傾向があった。6)骨髄間葉細胞は角膜実質で生存し、角膜内沈着ムコ多糖変性物が消失した。
結論
転写因子調節能を解析し、微細な差違を生じるスプライスは普遍的なことを見出した。正常眼圧緑内障のOPTN変異体トランスジェニックマウスを作製した。神経幹細胞がアロ移植ドナー細胞として有用であることを示した。神経細胞分化に関わるシグナル伝達系の一端を解明した。Notchシグナルは視細胞への分化の運命を負に、Notch の細胞内拮抗分子Numbは正に、調節していた。先天ムコ多糖症モデルマウスの角膜混濁に骨髄間葉細胞を移植し、移植細胞生着と角膜混濁の沈着が消失が確認され、細胞治療の可能性が示された。

公開日・更新日

公開日
2005-04-28
更新日
-