ミトコンドリアDNA遺伝子変異による高頻度薬剤性難聴発症の回避に関する研究

文献情報

文献番号
200400581A
報告書区分
総括
研究課題名
ミトコンドリアDNA遺伝子変異による高頻度薬剤性難聴発症の回避に関する研究
課題番号
-
研究年度
平成16(2004)年度
研究代表者(所属機関)
水柿 道直(東北薬科大学(臨床薬剤学教室))
研究分担者(所属機関)
  • 平塚 真弘(東北薬科大学(臨床薬剤学教室))
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 感覚器障害研究
研究開始年度
平成15(2003)年度
研究終了予定年度
平成16(2004)年度
研究費
10,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
ミトコンドリア(mt)DNA の1555番目のA→G変異を有する人は、アミノグリコシド系抗生物質による不可逆的な感音性難聴の副作用を高頻度で発現することが報告されている。本研究では、mtDNA のA1555G変異をベッドサイドや診療現場で簡易に検出できる系を開発する。また、mtDNA A1555G変異を有する患者のリンパ芽球を樹立することで、様々な薬物の副作用発現の可能性を予測できるスクリーニング系の構築が期待できる。
研究方法
mtDNA A1555G変異検出のためのベッドサイド遺伝子診断法の診断時間短縮化を検討した。島津製作所製Ampdirectを用い血液からの直接PCRを行った。また、高速サーマルサイクラーを用いてPCR増幅時間の短縮を図った。次に、mtDNA 1555A(野生型)及び1555G(変異型)由来のリンパ芽球の樹立を試みた。毒性評価はストレプトマイシンを添加しトリパンブルー染色による生細胞数のカウント及びMTT法による細胞毒性を観察した。臨床応用として、東北大学附属病院遺伝科において遺伝外来を受診した患者とその子供のmtDNA A1555G遺伝子診断を行った。
結果と考察
血液直接PCR試薬Ampdirectと短時間型高速サーマルサイクラーの利用により、検体採取から遺伝子型決定までを約1時間に短縮することができた。また、毒性スクリーニング系で用いるためのmtDNA 1555A(野生型)リンパ芽球株の樹立に成功した。1555G(変異型)リンパ芽球については現在安定株を樹立中である。mtDNA 1555A(野生型)リンパ芽球株を用いて細胞障害性を検討したところ、ストレプトマイシン5~300μg/mLの濃度で48時間観察したが、顕著な細胞死やMTT法による細胞障害性を確認することはできなかった。実際の臨床現場でmtDNA A1555G変異を診断し、患者のmtDNA A1555G変異を特定した臨床応用を1例行い、将来的な薬剤性難聴発症の予防に貢献できた。
結論
アミノグリコシド系抗生物質の標準的投与にもかかわらず難聴を誘発する原因遺伝子の一つであるmtDNAのA1555G変異を簡易迅速に検出できる遺伝子診断法を確立した。感音性難聴障害を有する患者の約6%がmtDNA A1555Gを有することが報告されていることから、この遺伝子情報を予防医学的に臨床現場で利用することが必要である。

公開日・更新日

公開日
2005-04-20
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

公開日・更新日

公開日
2006-02-20
更新日
-

文献情報

文献番号
200400581B
報告書区分
総合
研究課題名
ミトコンドリアDNA遺伝子変異による高頻度薬剤性難聴発症の回避に関する研究
課題番号
-
研究年度
平成16(2004)年度
研究代表者(所属機関)
水柿 道直(東北薬科大学(臨床薬剤学教室))
研究分担者(所属機関)
  • 平塚 真弘(東北薬科大学(臨床薬剤学教室))
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 感覚器障害研究
研究開始年度
平成15(2003)年度
研究終了予定年度
平成16(2004)年度
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
ミトコンドリア(mt)DNA の1555番目のA→G変異を有する人は、アミノグリコシド系抗生物質による不可逆的な感音性難聴の副作用を高頻度で発現することが報告されている。本研究では、mtDNA のA1555G変異をベッドサイドや診療現場で簡易に検出できる系を開発する。また、mtDNA A1555G変異を有する患者のリンパ芽球を樹立することで、様々な薬物の副作用発現の可能性を予測できるスクリーニング系の構築が期待できる。
研究方法
イムノクロマトグラフィーを利用したベッドサイド遺伝子診断法の開発を行った。同法は変異が存在していれば、ストリップ上に紫色の金コロイド凝集バンドが形成され、遺伝子型を視覚的に判別することができる。また、血液からの直接PCRと高速サーマルサイクラーを用いてPCR増幅時間の短縮を図った。次に、mtDNA 1555A(野生型)及び1555G(変異型)由来のリンパ芽球の樹立を試みた。毒性評価はストレプトマイシンを添加しトリパンブルー染色による生細胞数のカウント及びMTT法による細胞毒性を観察した。臨床応用として、東北大学附属病院遺伝科において遺伝外来を受診した患者とその子供のmtDNA A1555G遺伝子診断を行った。
結果と考察
イムノクロマトグラフィーを利用した方法は、PCR後の操作から5分で結果の判別が可能であった。血液直接PCR試薬Ampdirectと短時間型高速サーマルサイクラーの利用により、検体採取から遺伝子型決定までを約1時間に短縮することができた。毒性スクリーニング系で用いるためのmtDNA 1555A(野生型)リンパ芽球株の樹立に成功し、ストレプトマイシン5~300μg/mLの濃度で48時間観察したが、顕著な細胞死やMTT法による細胞障害性を確認することはできなかった。実際の臨床現場でmtDNA A1555G変異を診断し、将来的な薬剤性難聴発症の予防に貢献できた。
結論
アミノグリコシド系抗生物質の標準的投与にもかかわらず不可逆的感音性難聴を誘発する原因遺伝子の一つであるmtDNAのA1555G変異を、ベッドサイドや診療現場で簡易迅速に検出することができる遺伝子診断法を確立した。mtDNAは母系遺伝で子孫に伝搬するため、患者一人を遺伝子診断することで多くの近親者のmtDNA遺伝子型が予測でき、効率的に医薬品による副作用を未然に回避することができると考えられる。

公開日・更新日

公開日
2005-04-20
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

公開日・更新日

公開日
2006-02-20
更新日
-