難治性内眼炎の発症機序解明と新しい免疫治療に関する研究

文献情報

文献番号
200400577A
報告書区分
総括
研究課題名
難治性内眼炎の発症機序解明と新しい免疫治療に関する研究
課題番号
-
研究年度
平成16(2004)年度
研究代表者(所属機関)
大野 重昭(北海道大学大学院医学研究科病態制御学専攻感覚器病学講座視覚器病学分野)
研究分担者(所属機関)
  • 小野江 和則(北海道大学遺伝子病制御研究所)
  • 酒井 正春(北海道大学大学院医学研究科分子生物学分野)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 感覚器障害研究
研究開始年度
平成14(2002)年度
研究終了予定年度
平成16(2004)年度
研究費
14,400,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
内眼炎(ぶどう膜炎)は突然発症し視力低下をきたす疾患であり、中には失明に至る症例もある。しかしその病態は複雑であり、いまだ解明には至っていない。我々は内眼炎の新たな治療法開発を目的に研究を行なった。
研究方法
1. 従来の治療法では十分な治療効果が得られないベーチェット病患者に顆粒球除去療法を施行した。
2. 長期ぶどう膜炎罹患患者にステロイド徐放剤のインプラント手術、または硝子体内注入手術を行った。
3. 天然存在物質のなかから抗炎症薬の候補を選び、動物のエンドトキシン誘発眼炎症モデルに投与した。
4. ケモカインの一種である、MCP-1を過剰に発現させたマウスにヒト内眼炎動物モデルである実験的自己免疫性網膜ぶどう膜炎を惹起して、その重症度を正常マウスと比較した。
結果と考察
1. 顆粒球除去療法は既に潰瘍性大腸炎、関節リウマチにおいて有効性、安全性が報告されている。免疫抑制剤等が無効で、重篤な眼炎症を繰り返すベーチェット病患者6例中3例で本治療が有効であり、しかも罹病期間の長い症例で特に有効であることが判明した。
2. 長期間のぶどう膜炎により嚢胞様黄斑浮腫、強い硝子体混濁が生じることがあり、その結果視力は著しく低下する。今回、ステロイド徐放剤のインプラント手術、または硝子体内注入手術を行った長期ぶどう膜炎罹患患者全例で炎症の軽快と視力向上がみられた。全身副作用が少なく、かつ治療効果が高い有望な治療法となる可能性がある。ただし、治療後の眼圧経過を慎重に観察する必要があることも判明した。
3. 自然界には薬理作用を持つ物質が多数存在する。今回、わが国に豊富に存在するアスタキサンチン、イチョウ葉抽出物に強力な抗炎症効果があることが判明した。眼炎症に対する効果は代表的副腎皮質ホルモンであるプレドニンと同程度であり、将来の有力な薬剤候補である可能性がある。
4. MCP-1を過剰に発現させたマウスでは正常マウスに比べ、実験的自己免疫性網膜ぶどう膜炎が増強された。しかし、抗MCP-1抗体を投与したマウスではぶどう膜炎が抑制されなかった。ケモカインである MCP-1 は早期にぶどう膜炎を発症させることに関与している可能性がある。
結論
内眼炎の新たな治療法開発へ向けて、眼科学、免疫学、薬理学にまたがる研究を行った。本成果は近未来の難治性内眼炎(難治性ぶどう膜炎)治療実用化への大きな前進である。

公開日・更新日

公開日
2005-06-15
更新日
-

文献情報

文献番号
200400577B
報告書区分
総合
研究課題名
難治性内眼炎の発症機序解明と新しい免疫治療に関する研究
課題番号
-
研究年度
平成16(2004)年度
研究代表者(所属機関)
大野 重昭(北海道大学大学院医学研究科病態制御学専攻感覚器病学講座視覚器病学分野)
研究分担者(所属機関)
  • 小野江 和則(北海道大学遺伝子病制御研究所病態研究部門免疫生物分野)
  • 石橋 輝雄(北海道大学大学院医学研究科生体機能学専攻分子生化学講座分子医化学分野)
  • 酒井 正春(北海道大学大学院医学研究科生体機能学専攻分子生化学講座分子生物学分野)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 感覚器障害研究
研究開始年度
平成14(2002)年度
研究終了予定年度
平成16(2004)年度
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
内眼炎(ぶどう膜炎)は突然発症し視力低下をきたす疾患であり、失明に至る症例もあるが、病態はいまだ解明には至っていない。我々は内眼炎の新たな治療法開発を目的に研究を行なった。
研究方法
内眼炎の代表的疾患であるベーチェット病、原田病、サルコイドーシスの原因遺伝子を同定するため患者血液から遺伝子を抽出してマイクロサテライト法を用いた。

1. 従来の治療法では十分な治療効果が得られないベーチェット病患者に顆粒球除去療法を施行した。
2. 長期ぶどう膜炎罹患患者にステロイド徐放剤のインプラント手術、または硝子体内注入手術を行った。
3. 天然存在物質のなかから抗炎症薬の候補を選び、動物のエンドトキシン誘発眼炎症モデルに投与した。
4. ケモカインの一種である、MCP-1を過剰に発現させたマウスにヒト内眼炎動物モデルである実験的自己免疫性網膜ぶどう膜炎を惹起して、その重症度を正常マウスと比較した。
結果と考察
ベーチェット病、原田病、サルコイドーシスの第1次スクリーニングを終了し、9%のマーカーが陽性となった。
1. 顆粒球除去療法は既に潰瘍性大腸炎、関節リウマチにおいて有効性、安全性が報告されている。免疫抑制剤等が無効で、重篤な眼炎症を繰り返すベーチェット病患者6例中3例で本治療が有効であり、しかも罹病期間の長い症例で特に有効であることが判明した。
2. 長期間のぶどう膜炎により嚢胞様黄斑浮腫、強い硝子体混濁が生じることがあり、その結果視力は著しく低下する。今回、ステロイド徐放剤のインプラント手術、または硝子体内注入手術を行った長期ぶどう膜炎罹患患者全例で炎症の軽快と視力向上がみられた。全身副作用が少なく、かつ治療効果が高い有望な治療法となる可能性がある。
3. わが国に豊富に存在するアスタキサンチン、イチョウ葉抽出物に強力な抗炎症効果があることが判明した。
4. MCP-1を過剰に発現させたマウスでは正常マウスに比べ、実験的自己免疫性網膜ぶどう膜炎が増強され、抗MCP-1抗体を投与したマウスではぶどう膜炎が抑制されなかった。ケモカインである MCP-1 は早期にぶどう膜炎を発症させることに関与している可能性がある。
結論
内眼炎の新たな治療法開発へ向けて、眼科学、免疫学、薬理学にまたがる研究を行った。本成果は近未来の難治性内眼炎(難治性ぶどう膜炎)治療実用化への大きな前進である。

公開日・更新日

公開日
2005-06-23
更新日
-