強度近視における血管新生黄斑症の包括的治療法の確立

文献情報

文献番号
200400569A
報告書区分
総括
研究課題名
強度近視における血管新生黄斑症の包括的治療法の確立
課題番号
-
研究年度
平成16(2004)年度
研究代表者(所属機関)
大野 京子(東京医科歯科大学大学院医歯学総合研究科眼科学)
研究分担者(所属機関)
  • 森田 育男(東京医科歯科大学大学院医歯学総合研究科分子細胞機能)
  • 望月 學(東京医科歯科大学大学院医歯学総合研究科眼科学)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 感覚器障害研究
研究開始年度
平成16(2004)年度
研究終了予定年度
平成16(2004)年度
研究費
2,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
わが国は世界有数の近視国であり,強度近視による視覚障害は失明原因の上位を占める。中でも黄斑部に生じる脈絡膜新生血管,近視性血管新生黄斑症は強度近視患者の失明原因として注目されているが,有効な治療は確立されていない。そこで本研究では,本症における新生血管発生機序を解明するとともに,すでに発生した新生血管に対しては,光線力学療法(PDT)とステロイド剤triamcinolone acetonide (TA)をわが国ではじめて本症患者に臨床応用し,短期的効果を解明する。
研究方法
強度近視の病態である眼軸の延長を模して,ヒト網膜色素上皮細胞(RPE)に機械的伸展を負荷して培養した際に生じる血管新生関連因子の遺伝子発現変化を検討するとともに,種々の薬剤により上記の発現変化が抑制できるか調べる。同時に,本症患者に対し,PDTもしくはTAの眼球後部テノン嚢下投与を施行し,短期的効果を明らかにする。
結果と考察
機械的刺激負荷時のヒトRPEでは,血管新生抑制因子である色素上皮由来因子PEDFの発現は変化しなかったが,血管内皮増殖因子VEGFの著明な発現上昇がみられた。培地中にdexamethasone,indomethacinを添加するとVEGFの発現上昇が抑制された。
本症患者に対しTAのテノン嚢下投与を施行すると,新生血管の早期退縮が促進され,治療3,6ヵ月後に有意な視力改善が得られた。またPDT治療により,全例でに新生血管閉塞がみられ視力が改善した。
以上から眼軸延長に伴う機械的刺激によるRPE由来の血管新生関連因子の発現変化が本症における血管新生に関与する可能性が示唆された。抗炎症薬の投与によりこれらの発現変化が抑制されたことから,本症に対するこれら薬剤の有用性が示唆された。
結論
本症における血管新生の発生機序として,機械的刺激の負荷によるRPE由来の血管新生関連因子の発現変化が重要であり,これらに対してはステロイド剤もしくはNSAIDsを用いた治療が有効である可能性がある。さらに,すでに発生した新生血管に対してはPDT及びTAが新生血管閉塞に有効であり本症の短期予後を改善することができる。

公開日・更新日

公開日
2005-04-20
更新日
-