網膜血管新生抑制機構の解明とその応用

文献情報

文献番号
200400568A
報告書区分
総括
研究課題名
網膜血管新生抑制機構の解明とその応用
課題番号
-
研究年度
平成16(2004)年度
研究代表者(所属機関)
細谷 健一(富山医科薬科大学薬学部)
研究分担者(所属機関)
  • 登美 斉俊(富山医科薬科大学薬学部)
  • 笹岡 利安(富山医科薬科大学薬学研究科)
  • 寺崎 哲也(東北大学未来科学技術共同研究センター)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 感覚器障害研究
研究開始年度
平成16(2004)年度
研究終了予定年度
平成18(2006)年度
研究費
16,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
我々は、網膜ペリサイトから分泌される因子が網膜毛細血管内皮細胞の増殖を制御していると仮説を立て、我々が樹立した網膜毛細血管内皮細胞株(TR-iBRB)と網膜ペリサイト株(TR-rPCT)の共培養解析の結果、TR-rPCT細胞培養培地濃縮液をTR-iBRB細胞に添加すると増殖が著しく抑制されることを見いだした。網膜ペリサイト株から分泌される細胞増殖抑制因子を同定することは糖尿病網膜症の治療への応用、または発症のメカニズム解明と新しい学問の突破口となる可能性が高く社会的にも重要である。
 そこで本研究では、網膜ペリサイトから分泌される網膜血管内皮細胞増殖因子を同定することを目的とした。
研究方法
TR-rPCT細胞培養濃縮液からタンパクを分子量で分画した。各フラクションの細胞増殖抑制効果はTR-iBRB細胞におけるDNA合成活性から判定した。各フラクションのタンパクは、二次元電気泳動で分離後、MALDI-TOFMSで質量ならびにアミノ酸配列を解析した。さらに、PMF解析、GenBankを活用して同定した。
結果と考察
60のフラクションの中でNo. 25のフラクション付近でDNA合成抑制が示された。このフラクションタンパクの同定解析からトロポミオシン(TM)に近い新規タンパクであることが示唆された。RT-PCR法でORFのクローニングを行った。その結果、ラット網膜およびTR-rPCT細胞において既知の配列とは異なる新規TMタンパクをコードするmRNAが発現していることが示された。
 新規に単離したTMタンパクのリコンビナント体を作製するために、目的遺伝子のORFを発現誘導ベクターに導入し、大腸菌にて培養し、精製した。精製したタンパクは、タンパク質量およびアミノ酸配列解析を行い、単離したタンパクと同一であることを確認した。
 得られたタンパクの内皮細胞増殖抑制効果は、TR-iBRB細胞を用いて解析した。新規に単離したTMタンパクは濃度依存的にTR-iBRB細胞の増殖を抑制し、50%阻害濃度は約2 microMであった。
結論
本研究によって、網膜ペリサイトから分泌される網膜血管内皮細胞増殖因子の1つとして新規トロポミオシンの関与を明らかにした。今後は、このタンパクの内皮細胞増殖抑制メカニズムを解明し、薬理効果を証明する予定である。

公開日・更新日

公開日
2005-04-20
更新日
-