重症多形滲出性紅斑に対する眼科的治療法の確立

文献情報

文献番号
200400566A
報告書区分
総括
研究課題名
重症多形滲出性紅斑に対する眼科的治療法の確立
課題番号
-
研究年度
平成16(2004)年度
研究代表者(所属機関)
木下 茂(京都府立医科大学視覚機能再生外科学)
研究分担者(所属機関)
  • 橋本公二(愛媛大学医学部皮膚科学)
  • 坪田一男(慶応義塾大学医学部眼科学)
  • 大橋裕一(愛媛大学医学部眼科学)
  • 外園千恵(京都府立医科大学視覚機能再生外科学)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 感覚器障害研究
研究開始年度
平成16(2004)年度
研究終了予定年度
平成18(2006)年度
研究費
28,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
本研究は、多形滲出性紅斑の重症型であるStevens-Johnson症候群(以下SJ症候群)に対する新規治療として、培養粘膜上皮シート移植(培養角膜上皮シート移植・培養口腔粘膜上皮シート移植)という眼科的治療法を確立することを目的とする。
研究方法
培養粘膜上皮シート移植を施行し、その効果と合併症を検討した。造血幹細胞の上皮細胞への分化への可能性を検討した。患者眼表面組織について病理学的解析を行った。本症候群の皮膚科診断と眼科診断の相同性について討議を行った。新しい視力検査方法(実用視力検査)を開発し、本症候群のQOV評価に妥当かどうかを検討した。患者データベースを作成した。本疾患患者より分離したMRSAの遺伝子解析を行った。患者涙液中の抗酸化物質及び炎症性サイトカインの濃度を解析した。自然免疫応答に重要なToll like receptor (TLR)のシグナルに関与するIkB-zをノックアウトしたマウス眼表面の組織学的解析を行った。
結果と考察
平成16年度に培養粘膜上皮シート移植を施行した全例において、視力改善および眼表面の良好な再建を得た。角膜組織に造血幹細胞が分布することを明らかにした。本症候群の眼表面では上皮の過増殖と角化、上皮下の炎症細胞浸潤が生じていた。重症多形滲出性紅斑の症例を詳細に検討することにより、診断基準案2004を作成した。実用視力は視機能の評価に有用であると考えられた。患者データベースより、視力障害の程度は様々であり、眼瞼の瘢痕性変化が本症候群の特徴であることが明らかとなった。患者より分離したMRSAは、全てが病院型であった。患者涙液中には極めて高濃度のTRXとIL-8が存在した。ノックアウトマウスでは眼表面に特異な炎症を認め、眼表面上皮から結膜杯細胞が消失していた。
結論
患者データベースの作成により、本症候群の全体像を把握、解析することが可能となった。本症候群の診断基準作成、病態解明および有効な治療法の確立のためには、今後はプロスペクティブに発症時より皮膚科と眼科が共同して治療にあたることが必要である。本症候群の病態には高度の炎症が深く関与することが判明した。この炎症を制御することが、新しい有用な治療の開発に結びつくことが示唆された。病態の特徴として、眼瞼の瘢痕性変化、高度かつ特異な炎症、易感染性が明確に示され、ノックアウトマウスの組織所見もこれらを示唆するものであった。これらの特徴的病態について、さらに詳細な検討を要する。

公開日・更新日

公開日
2005-04-28
更新日
-