文献情報
文献番号
200400565A
報告書区分
総括
研究課題名
網膜刺激型電極による人工視覚システムの開発
課題番号
-
研究年度
平成16(2004)年度
研究代表者(所属機関)
田野 保雄(大阪大学大学院医学系研究科)
研究分担者(所属機関)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 感覚器障害研究
研究開始年度
平成16(2004)年度
研究終了予定年度
平成18(2006)年度
研究費
120,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-
研究報告書(概要版)
研究目的
網膜刺激電極による人工視覚システムの開発は、網膜色素変性、加齢黄斑変性など、網膜疾患で失明した患者に対して生活視力を回復させることを目的とする。3年計画の本研究は、慢性の実験動物に対して、眼前指数弁程度の人工視覚を証明することを目標とする。網膜刺激電極の方式としては、われわれが独自に開発した、脈絡膜上-経網膜刺激 (STS) 方式を用いる。本年度は、家兎にSTS法で慢性的に電極を埋植する術式の開発を行い、長期的に埋植した電極の生理学的および組織学的検討を行った。また、ネコを用いて、STS方式による電極刺激の生理学的評価を行った。
研究方法
開発困難であった、凸型の薄い電極を開発すると同時に、家兎強膜内に電極を設置して慢性的に電気刺激できるシステムを開発し、STS方式で十分な振幅のEEPが得られる電流値(100uA)で、2週間毎日1時間刺激した場合の、EEPの振幅変化および強膜および網膜の組織学的変化を検討した。また、STS方式で受容野近傍の網膜部位を電気刺激した場合の神経活動を、ネコ外側膝状体での単一細胞記録により測定し、電流の拡がりと発火頻度の関係を検討した。されに、経角膜的に電気刺激した場合の網膜に対する影響を、視細胞変性モデルラット(RCSラット)を用いて、網膜電位図(ERG)および組織学的方法で検討した。
結果と考察
新たに開発された凸型の電極は、安定して家兎強膜内に埋植され、2週間毎日1時間刺激しても、最終的なEEPの振幅および電極インピーダンスに変化はなく、また組織学的にも変化は認められなかった。これは、STS方式が、慢性的に電気刺激した場合でも安全かつ有効であることを示す。低い電流値で高頻度に神経が発火するのは、ネコ網膜で受容野の中心から視角2度以内程度の近傍に電極を設置された場合であった。これは、指数弁程度の分解能がSTS方式の人工網膜で得られることを示唆する。RCSラット網膜に対して電気刺激を行った群では、電気刺激しなかった群と比較して、ERGの振幅が大きく、視細胞の核が存在する外顆粒層が有意に厚かったことから、網膜電気刺激は視細胞に対して神経保護効果を与えることが示された。
結論
独自に開発したSTS法を用いて、本プロジェクトが目標とする指数弁程度の人工視覚を達成することが可能であること、および長期的に電極を埋植し、慢性的に電気刺激した場合においても、STS方式は安全かつ有効であることが示された。
公開日・更新日
公開日
2005-04-21
更新日
-