文献情報
文献番号
200400558A
報告書区分
総括
研究課題名
脊髄損傷者用歩行補助装具の開発
課題番号
-
研究年度
平成16(2004)年度
研究代表者(所属機関)
太田 裕治(お茶の水女子大学(生活科学部))
研究分担者(所属機関)
- 中澤 公孝(国立身体障害者リハビリテーションセンター研究所)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 障害保健福祉総合研究
研究開始年度
平成14(2002)年度
研究終了予定年度
平成16(2004)年度
研究費
3,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-
研究報告書(概要版)
研究目的
過去において脊髄損傷者用の各種歩行装具が開発されてきたが,いずれも専門施設内でのリハビリテーションにとどまり日常的な利用には至ってはいない.膝関節が曲がらないなど関節回転自由度が少ないこと,また,動力手段を持たない為歩きにくく多大な歩行労力を要する点が,理由の一つと考えられる.本研究では,股・膝両関節にパワーアシスト機構を付与した多自由度・低労力型歩行装具を開発し,より日常的な場での利用に供する事を目的とした.
研究方法
①下肢装具を用いた脊髄損傷者の歩行動作は健常者とは異なり,運動周期全般にわたって膝関節が伸展位で固定される.この点は歩行遊脚期における下肢振り出しの際に床面とのクリアランス確保を困難にする上,装具歩行の運動効率を悪化させる.ここでは,交互歩行装具ARGOの膝関節・股関節部にアクチュエータを装備することにより歩行遊脚期に膝関節の屈曲-伸展運動を実現できる動力装置を開発し,トレッドミル上での歩行動作の評価を行った.
②装具歩行訓練を繰り返し行うことで麻痺下肢筋に歩行周期と同調した筋活動が発現する.これは歩行動作に伴う末梢感覚入力により脊髄感覚ニューロン活動が喚起されたものと考えられる.上記交互歩行装具を利用し,麻痺下肢に末梢性感覚入力の変化を与える実験を行った.
②装具歩行訓練を繰り返し行うことで麻痺下肢筋に歩行周期と同調した筋活動が発現する.これは歩行動作に伴う末梢感覚入力により脊髄感覚ニューロン活動が喚起されたものと考えられる.上記交互歩行装具を利用し,麻痺下肢に末梢性感覚入力の変化を与える実験を行った.
結果と考察
①完全麻痺を持つ脊髄損傷者4名を装具歩行計測の被験者とし,改良ARGOを装着させトレッドミル上での歩行を行い,床反力,歩行動作を計測した.その結果,膝を屈曲することでクリアランスが有意に増加することが分かった.
②装具による強制歩行は全例で筋活動を誘起した.遊脚期における膝関節の屈曲伸展により直接筋長の変化がもたらされる大腿筋群,腓腹筋に変化を認める被験者が多かった.この結果は,膝関節動作の実現が麻痺領域の神経活動を変化させることを示すものであった.
②装具による強制歩行は全例で筋活動を誘起した.遊脚期における膝関節の屈曲伸展により直接筋長の変化がもたらされる大腿筋群,腓腹筋に変化を認める被験者が多かった.この結果は,膝関節動作の実現が麻痺領域の神経活動を変化させることを示すものであった.
結論
市販の歩行装具を2点の小型アクチュエータにより動力化し得た.簡便な機構かつ安全性も高いため,実用化が可能である.従来,膝関節回転可能な歩行装具は存在せず意義は高い.今後,多数の被験者実験を通じ,歩行機能,歩容解析,エネルギーコスト,cosmesisなどの観点で有効性が期待できる.
被験者実験を通じ,膝関節・股関節回転とも,有効なCPGへの入力要素となりうることが分かった.従来,CPGの再活性化には,股関節の伸展信号および抗重力筋への荷重負荷が必要と考えられていたが,本研究はそれらに加え,膝関節の屈曲進展も同様の作用を有することを見出した.実験対象は傷害部位の様々な被験者群であったため,今後CPGの振舞・制御性に関して検討を行う必要がある.
被験者実験を通じ,膝関節・股関節回転とも,有効なCPGへの入力要素となりうることが分かった.従来,CPGの再活性化には,股関節の伸展信号および抗重力筋への荷重負荷が必要と考えられていたが,本研究はそれらに加え,膝関節の屈曲進展も同様の作用を有することを見出した.実験対象は傷害部位の様々な被験者群であったため,今後CPGの振舞・制御性に関して検討を行う必要がある.
公開日・更新日
公開日
2005-04-28
更新日
-