精神疾患の呼称変更と効果に関する研究

文献情報

文献番号
200400552A
報告書区分
総括
研究課題名
精神疾患の呼称変更と効果に関する研究
課題番号
-
研究年度
平成16(2004)年度
研究代表者(所属機関)
大野 裕(慶應義塾大学保健管理センター)
研究分担者(所属機関)
  • 西村由貴(慶應義塾大学保健管理センター)
  • 金 吉晴(国立精神・神経センター)
  • 佐藤光源(東北福祉大学)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 障害保健福祉総合研究
研究開始年度
平成14(2002)年度
研究終了予定年度
平成16(2004)年度
研究費
7,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
本研究は、schizophreniaの呼称の変更が臨床現場や社会にどのような波及効果を及ぼしたかについて、変更後2年2ヶ月を経過した時点で調査した。
研究方法
まず日本精神神経学会および宮城県精神保健福祉士協会会員を対象に質問紙調査を行った。この他、告知の技法に関して文献的検討とグループワークを通した検証を行った。
結果と考察
告知に肯定的反応を示した医師が増加し、告知の際に合失調症という呼称を使う傾向が9割を超えていた。告知を憂慮する要因としては「医師―患者間の信頼関係」が最も多く選択され、ついで「病状」であり、相手の理解度・知的水準、病期・経過期間も考慮されていた。精神保健福祉領域における調査では、対象の98%が呼称の変更を周知しており、呼称変更により、病名告知率が増した、病状の説明がしやすくなった、などの好ましい変化が現れたと考えていた。ただ、精神保健福祉活動においても精神障害(者)に対する偏見や差別の解消が存在しており、なお今後の大きな課題になっていることがわかった。
このように統合失調症という新呼称が医療および精神県領域に定着し、それによって生活機能障害のある回復者の社会参加を促進する方向の波及効果が生じていることが示された。しかし、精神障害(者)に対する根強い偏見と差別の是正には、病気に関する医学の進歩を踏まえた適正な知識を普及啓発することが急務であると考えられた。また、今後は診療報酬等の後押しによりよい心理教育が多くの現場で実践され、提供すべき情報を標準化することで治療に役立つ告知を行い当事者のエンパワーメントがなされることが期待されるたさらに、告知に関するグループワークからは、病告知の態度や環境、告知後の適切な情報提供が重要と考えられた。
結論
統合失調症という用語は広く受け入れられるようになっており、今後はそれを臨床に生かす環境を作り出す施策が重要であると考えられた。

公開日・更新日

公開日
2005-04-28
更新日
-

文献情報

文献番号
200400552B
報告書区分
総合
研究課題名
精神疾患の呼称変更と効果に関する研究
課題番号
-
研究年度
平成16(2004)年度
研究代表者(所属機関)
大野 裕(慶應義塾大学保健管理センター)
研究分担者(所属機関)
  • 西村由貴(慶應義塾大学保健管理センター)
  • 金 吉晴(国立精神・神経センター)
  • 佐藤光源(東北福祉大学)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 障害保健福祉総合研究
研究開始年度
平成14(2002)年度
研究終了予定年度
平成16(2004)年度
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
本研究は、schizophreniaの呼称の変更が臨床現場や社会にどのような波及効果を及ぼしたかについて、変更後2年2ヶ月を経過した時点で調査した。
研究方法
精神医学及び関連領域や関連職種を対象に質問紙調査を行った。また、文献的レビューやグループワークを通して病名告知のあり方について検討した。
結果と考察
今呼称変更後は告知率上昇し、殆どが統合失調症を用いていることが明らかになった。関連領域でも同様の状況が認められ、統合失調症が臨床場面で定着してきたことが示されたことは特筆に値する。今後は病名変更を機に、この病気に対する適正な知識の普及啓発(とくに学校教育における啓発)が急務であると考えられる。
告知の基本は心理教育にあるが、その際には「当事者への心理教育=当事者が主体的に治療環境に関わることへのエンパワーメント」へと認識が変化したことを理解しておくことが重要である。今後は診療報酬等の後押しによりよい心理教育が多くの現場で実践され、提供すべき情報を標準化することで治療に役立つ告知を行い当事者のエンパワーメントがなされることが期待される。
慢性統合失調症患者に対する告知に関するグループワークからは、病名を教えられても動揺することは少なく、グループの支持的な環境が疾病の理解を深めるのに有用であることが示された。
結論
①統合失調症が単独で用いられる病名として確立してきたことが明らかとなり、精神保健福祉法の旧病名を新病名に変更するための条件がすでに整っていることが示された。
②当事者のエンパワーメントにつながる知のあり方を検討する必要があることが示された。
③告知に際しては、態度や環境、告知後の適切な情報提供が重要であることが示された。

公開日・更新日

公開日
2005-04-28
更新日
-