文献情報
文献番号
200400547A
報告書区分
総括
研究課題名
重度精神障害者の治療及び治療効果等のモニタリングに関する研究
課題番号
-
研究年度
平成16(2004)年度
研究代表者(所属機関)
吉川 和男(国立精神・神経センター精神保健研究所司法精神医学研究部)
研究分担者(所属機関)
- 樋口 輝彦(国立精神・神経センター武蔵病院)
- 平林 直次(国立精神・神経センター武蔵病院)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 障害保健福祉総合研究
研究開始年度
平成16(2004)年度
研究終了予定年度
平成18(2006)年度
研究費
14,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-
研究報告書(概要版)
研究目的
我が国の精神医療は、これまで根拠に基づいた医療EBMを実践してきたとは言い難い状況にある。そこで本研究では新たに新設される指定入院医療機関でのネットワークを活用することによって治療データを組織的に集積し、かつ、重度の精神障害を有する者に対する治療を統一プロトコルないしアルゴリズムに準拠して実施することによってその治療効果を科学的に評価していくことを目的とした。
研究方法
分担研究者(吉川和男)は、重大な他害行為を行った重度精神障害者に対するEBMを検証するため、諸外国ではその成果が実証されている認知行動療法CBTを元に他害行為防止治療プログラムの開発に取り組み、治療効果判定に適した研究デザインの作成を行った。分担研究者(樋口輝彦)は、精神科医療におけるエビデンスに基づく治療の普及に資するために強迫性障害に対して効果があるとされているCBTを実際の診療に導入した際の治療成績を検討し、精神科医の薬剤選択に影響を及ぼす考え方や意識に関する調査を行った。分担研究者(平林直次)は、英国における地域でのモニタリング体制、支援方法の実際に関する文献的検討を進め、わが国の司法精神医療に適した地域ケアのあり方を検討した。
結果と考察
重大な他害行為を行った重度精神障害者に対しては、幻覚・妄想に対するCBTとアンガー・マネージメントの二つのプログラムを複合的に実施することが重要であると考えられた。治療プログラムの作成に際しては、基本的なCBTの理念を押さえつつ、手法の相違点を盛り込んだ指導マニュアルが必要と思われた。強迫性障害専門外来において治療された患者は、1例を除き症状が改善した。治療方法の選択には患者の意向が強く働いていた。薬物治療のみの群とCBTを併用した群の間で改善度に差はなかった。薬物治療に関する意識調査では、ほとんどの医師が薬物治療アルゴリズムを目にしたことがあったが、患者の個別性に対応できないと感じたり、アルゴリズムのエビデンスに疑問を感じている医師も少なくなかった。
結論
重度精神障害者の治療にはCBTが有効であることが示唆された。治療の標準化やエビデンスに基づく最適な治療の普及のためには、医師及び患者に対する十分な啓発活動とサポートが必要と考えられた。我が国の地域司法精神医療では、CPAを中心とするケアの枠組みと、ACTによる直接ケアの提供とを組み合わせた地域ケアの実施が必要と考えられた。
公開日・更新日
公開日
2005-04-20
更新日
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