脊髄損傷後の身体機能低下を抑止する立位トレーニング方法の開発

文献情報

文献番号
200400533A
報告書区分
総括
研究課題名
脊髄損傷後の身体機能低下を抑止する立位トレーニング方法の開発
課題番号
-
研究年度
平成16(2004)年度
研究代表者(所属機関)
中澤 公孝(国立身体障害者リハビリテーションセンター研究所)
研究分担者(所属機関)
  • 赤居 正美(国立身体障害者リハビリテーションセンター病院)
  • 樋口 幸治(国立身体障害者リハビリテーションセンター病院)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 障害保健福祉総合研究
研究開始年度
平成16(2004)年度
研究終了予定年度
平成18(2006)年度
研究費
11,550,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
本研究は立位歩行運動のリハビリテーション効果を最大限に得ることを主眼として立位姿勢下での“歩行様運動”の運動・神経生理学的特性を探求し、麻痺領域の機能低下と二次障害発現リスクの減少に貢献する神経性、代謝性因子を整理する。具体的には、立位姿勢保持下での脚交互運動によって、麻痺領域の運動・神経機能を賦活する機序を解明し、さらに中長期的な立位トレーニングの実施による麻痺領域の機能変化を定量的に把握することを目的とした。
研究方法
全期間を通しての目標は、①立位姿勢下での下肢交互運動によって麻痺領域に筋活動を誘発する神経機序を解明すること、②反射性筋活動が組織の酸素動態を変調しえるのか否かを明らかにすること、③中長期的な立位運動が脊髄損傷後の身体機能の適応的変化を促すのか否か明らかにすること、④日常的に立位・歩行トレーニングを行うための補助犬の利用可能性を検討することである
本研究では前期に上記目標①、②に関する実験を行い、後期には立位歩行様運動による3ヶ月のトレーニングを脊髄損傷者を対象として実施し、前期に検討する下肢麻痺筋活動、酸素動態の変化を中心に、トレーニング経過に伴う身体機能の変化について運動・神経生理学的観点から定量化する。
結果と考察
・麻痺領域に発現する周期的筋活動の発現機序
立位歩行運動装置を用いて脊髄損傷者の麻痺下肢を受動的に動作させた結果、下肢筋群に運動位相に同調した筋活動が誘発された。完全損傷者10名を対象として下肢の動作様式を様々に変化させた際の筋活動を調べたところ、片脚のみの動作、左右同位相の動作と比較して左右交互の動作時に筋活動振幅が著明に増加した。
・麻痺筋の代謝・循環動態に関する研究
立位運動中に発現する筋活動に伴って、麻痺筋に酸素代謝、血流量の亢進が発現するのか否かについて、近赤外分光法を用いて調べた。脊髄損傷者では、麻痺下肢の歩行様筋活動の発現に伴って、麻痺筋への血流供給の増加を示す酸素化ヘモグロビンの顕著な増加が認められた。この結果は、受動的動作によって当該筋の反射性筋活動が発現し、これに伴って循環亢進が生じる可能性を示唆する。
結論
本研究の結果は、股関節の交互動作が歩行運動出力の発現に対して極めて重要な役割を担うことを示唆する。さらに、麻痺領域の循環亢進は褥瘡や浮腫など脊髄損傷後の二次障害の予防に貢献することから、新たなリハビリテーション方法確立の基礎的資料を提供し得るものと考えられる。

公開日・更新日

公開日
2005-04-21
更新日
-