厚生労働省多目的コホート班との共同による糖尿病実態及び発症要因の研究

文献情報

文献番号
200400528A
報告書区分
総括
研究課題名
厚生労働省多目的コホート班との共同による糖尿病実態及び発症要因の研究
課題番号
-
研究年度
平成16(2004)年度
研究代表者(所属機関)
門脇 孝(東京大学大学院医学系研究科内科学専攻(糖尿病・代謝内科))
研究分担者(所属機関)
  • 野田 光彦(虎の門病院内分泌代謝科)
  • 井上 真奈美(国立がんセンターがん予防・検診研究センター予防研究部)
  • 大橋 靖雄(東京大学大学院医学系研究科生物統計学科)
  • 上島 弘嗣(滋賀医科大学福祉保健医学教室)
  • 小久保 喜弘(国立循環器病センター集団検診部)
  • 佐藤 眞一(大阪府立健康科学センタ-健康度測定部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 循環器疾患等総合研究【脳卒中・生活習慣病臨床研究】
研究開始年度
平成16(2004)年度
研究終了予定年度
平成18(2006)年度
研究費
24,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
糖尿病は大血管合併症(虚血性心疾患や脳卒中)の危険性を増大し、腎症・網膜症・神経障害(細小血管症)によるQOLの低下を惹き起こす。本研究では既存の大規模コホートで糖尿病の調査を行うことにより、わが国の糖尿病の現状を明らかにし、発症率と発症要因(生活習慣との関係など)を知り、また、追跡調査により循環器疾患、脳卒中、さらには発癌に対するリスクとしての視点から糖尿病を分析する。
研究方法
厚生労働省がん研究助成金「多目的コホートによるがん・循環器疾患の疫学研究」(現「多目的コホートに基づくがん予防など健康の維持・増進に役立つエビデンスの構築に関する研究」)班(班長 津金昌一郎、以下、「多目的コホート班)と略)が維持してきたコホートにて糖尿病の実態調査(HbA1c、健診データ、質問票による)、解析(多目的コホート班による調査結果もあわせて)を行う。また、大血管合併症を含む諸疾患の追跡調査を行う。
結果と考察
 調査:平成16年度は茨城県水戸保健所(友部町)、新潟県柏崎保健所(小国町)での調査を終了した。
 解析:多目的コホート班(コホートI)のベースライン、5年後、10年後調査のアンケート結果を用い、ベースラインで糖尿病がなく、5年後 and/or 10年後調査で有糖尿病を申告した者を10年間の糖尿病発症と定義(自己申告糖尿病)し、これに対する危険因子を前向きコホート研究のデザインで分析した。
 10年間の糖尿病発症率は男性5.4%、女性3.0%であった。我々はこの方法により実際の糖尿病prevalenceの約55%を把握できることを確認しており、実際の糖尿病の発症率はこの約2倍程度(年率で男性1.12%、女性0.60%)と推定された。
 多重ロジスティック解析により、年齢、BMI(body mass index)、糖尿病の家族歴、高血圧の既往が男女ともに糖尿病の発症と有意に正相関した。喫煙(過去の喫煙と現在20本以上の喫煙)も男女いずれにおいても糖尿病発症のリスクを有意に上げていた。男性では一日のエタノール摂取が23g以上の者で発症リスクが有意に上昇していたが、BMIで層別化するとこれは22以下の者で顕著に認められた。
結論
わが国における糖尿病の発症率を自己申告糖尿病により推定し、生活習慣との関係を明らかにした。糖尿病発症は男性に多く、年齢、BMI、糖尿病の家族歴、高血圧の既往、喫煙が糖尿病の発症と正相関した。男性では一日のエタノール摂取が23g以上で発症リスクが有意に上昇し、BMIで層別化するとその影響は22以下の者で有意に認められた。

公開日・更新日

公開日
2005-06-30
更新日
-