2型糖尿病患者におけるアスピリンの冠動脈疾患一次予防効果に関する研究

文献情報

文献番号
200400513A
報告書区分
総括
研究課題名
2型糖尿病患者におけるアスピリンの冠動脈疾患一次予防効果に関する研究
課題番号
-
研究年度
平成16(2004)年度
研究代表者(所属機関)
小川 久雄(熊本大学大学院医学薬学研究部循環器病態学)
研究分担者(所属機関)
  • 斎藤 能彦(奈良県立医科大学・第一内科)
  • 杉本 充彦(奈良県立医科大学小児科)
  • 森本 剛(京都大学大学院・医学研究科臨床疫学)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 循環器疾患等総合研究【脳卒中・生活習慣病臨床研究】
研究開始年度
平成14(2002)年度
研究終了予定年度
平成16(2004)年度
研究費
24,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
本研究の目的は『日本人の2型糖尿病患者においてアスピリンの心血管系合併庄の一次予防に対する効果を、多施設共同研究にて行う』ことである。
研究方法
多施設合同でのオープン試験であり、全国における、糖尿病患者の加療を行っている医療機関にて実施する。対象症例に対して、文書によるインフォームド・コンセントを得た後、低容量アスピリン(81mg/日あるいは、100mg/日)の投与群と非投与群に無作為に割り付けする(封筒法。他の抗血小板能および抗凝固能を有する薬剤を服用している患者は、本試験から除外した。糖尿病の診断は、過去に75gブドウ糖負荷試験で、糖尿病と判定されているか、早朝空腹時血糖が127 mg/dl を越えることによる。割り付け時における糖尿病治療薬服用状況、循環器系治療薬服用状況、糖尿病性腎症、網膜症、および神経症の重症度分類、糖尿病歴、空腹時血糖及びインスリン値、白血球数、赤血球数、血色素量、CRP、HbAIc、冠動脈疾患の家族歴、喫煙歴、血中総コレステロール値、中性脂肪値、HDLコレステロール値、およびBMI値を評価する。また、追跡中のアスピリンの副作用についても評価する。
結果と考察
①平成17年3月17日までに、アスピリン投与群1,231例(平均年齢65歳)、アスピリン非投与群1,238例(平均年齢64歳)、合計2,469例が登録された。
②平成16年9月1日までの予後調査を行った2,003例(アスピリン投与群1,001例、アスピリン非投与群1,002例)について臨床的特徴及び予後を検討した。
③予後調査の結果、心血管系事故発生は32症例であり(アスピリン投与群11例、アスピリン非投与群21例)、アスピリン投与群に心血管系事故が少ない傾向にあった。
④アスピリンによる重篤な合併症は認められなかった。
結論
2型糖尿病患者においてアスピリンは動脈硬化性疾患の一次予防に有効である傾向にある。

公開日・更新日

公開日
2005-03-31
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

公開日・更新日

公開日
2006-02-20
更新日
-

文献情報

文献番号
200400513B
報告書区分
総合
研究課題名
2型糖尿病患者におけるアスピリンの冠動脈疾患一次予防効果に関する研究
課題番号
-
研究年度
平成16(2004)年度
研究代表者(所属機関)
小川 久雄(熊本大学大学院医学薬学研究部循環器病態学)
研究分担者(所属機関)
  • 斎藤 能彦(奈良県立医科大学第一内科)
  • 杉本 充彦(奈良県立医科大学小児科)
  • 森本 剛(京都大学大学院医学研究科臨床疫学)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 循環器疾患等総合研究【脳卒中・生活習慣病臨床研究】
研究開始年度
平成14(2002)年度
研究終了予定年度
平成16(2004)年度
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
2型糖尿病患者におけるアスピリンの動脈硬化性疾患一次予防効果について検討する。
研究方法
多施設合同でのオープン試験。対象症例(動脈硬化性疾患を有さない2型糖尿病患者)に対して、低容量アスピリン(81mg/日あるいは、100mg/日)の投与群と非投与群に無作為に割り付け(封筒法)、追跡調査を行う。エンドポイントは、1:血管系要因による死亡。2:非心血管系要因による死亡。3:非致死的心筋梗塞の発生。4:非致死的狭心症(安定、不安定を含む)の発生。5:非致死的無症候性心筋虚血の発生。6:非致死的脳血管障害の発生(明らかな一過性脳虚血発作:TIAを含む)。7:内科的あるいは外科的治療を要する動脈硬化性疾患(大動脈、頚動脈、腎動脈腸間膜動脈、末梢動脈等)の発生。8:脱落:アスピリンの副作用等により同剤の中止とする。
結果と考察
平成14年12月より症例登録を開始し、平成17年3月31日現在までの登録症例数は2,509例(アスピリン投与群:1251例、アスピリン非投与群:1258例)に達しており、全国167の医療機関から登録をいただいている。第二回予後観察終了日を平成16年9月30日とし、予後調査を施行した。対象は平成16年9月30日現在、予後を調査し得た2,003例(アスピリン投与群1,001例、アスピリン非投与群1,002例)とした。イベントのない症例の観察期間は274日(中央値)[95%信頼区間266~281]であった。全ての心血管系事故における解析は経過中の致死的急性心筋梗塞2例(非アスピリン群)、非致死的心筋梗塞5例(アスピリン投与群:1例、アスピリン非投与群:4例)、不安定狭心症1例(アスピリン非投与群1例)、致死的脳出血1名(アスピリン非投与群)、非致死的脳出血2例(アスピリン投与群1例、アスピリン非投与群1例)、非致死的脳梗塞10例(アスピリン投与群4例、アスピリン非投与群6例)、一過性脳虚血発作5例(アスピリン投与群2例、アスピリン非投与群3例)、治療を要するその他の動脈硬化性疾患の発生6例(アスピリン投与群3例、アスピリン非投与群3例)の計32例(アスピリン投与群11例、アスピリン非投与群21例)のイベントが発生した。両群間のイベント発生率に有意差は認められなかったが、アスピリン投与群に動脈硬化性疾患のイベントが少ない傾向であった(p=0.102)。
結論
今回の予後調査の結果、アスピリンによる重篤な副作用を認めなかった。心血管事故の発生はまだ少なく有意性はないものの、効果傾向を認めた。

公開日・更新日

公開日
2005-05-17
更新日
-