超急性期脳梗塞治療法の確立に関する多施設共同ランダム化比較試験

文献情報

文献番号
200401392A
報告書区分
総括
研究課題名
超急性期脳梗塞治療法の確立に関する多施設共同ランダム化比較試験
課題番号
-
研究年度
平成16(2004)年度
研究代表者(所属機関)
小川 彰(岩手医科大学(脳神経外科学講座))
研究分担者(所属機関)
  • 高橋 明(東北大学大学院医学系研究科神経病態制御学分野)
  • 滝 和郎(三重大学医学部脳神経外科)
  • 根本 繁(国家公務員共済組合連合会虎ノ門病院脳神経血管内治療科)
  • 峰松一夫(国立循環器病センター内科脳血管部門)
  • 森 悦朗(東北大学大学院医学系研究科高次機能障害学)
  • 宮本 享(国立循環器病センター脳血管外科)
  • 佐々木真理(岩手医科大学放射線医学講座)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 循環器疾患等総合研究【心筋梗塞・脳卒中臨床研究】
研究開始年度
平成16(2004)年度
研究終了予定年度
平成18(2006)年度
研究費
18,600,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
脳梗塞は高齢者のQOLを低下させる疾患として極めて重要である。局所血栓溶解線溶療法は脳梗塞の完成を阻止する治療として注目されている。本研究では本治療の効果を科学的に証明することを目的にした。
研究方法
本研究では54の研究協力施設を選定し国際的にも認知されるEBM Level 1 studyとして質の高い多施設共同ランダム化比較試験(RCT)を組織した。最適と考えられる検査法及び血管内治療手技を標準化した。検査・治療手技、治療成績を調査し試験デザインを決定し、大規模ランダム化比較試験を開始した。対象は発症6時間以内の中大脳動脈閉塞症例とした。ランダム化にはインターネットを用い、線溶療法群、対照群に割り付けた。線溶療法群はウロキナーゼの動注療法を施行し、対照群は線溶療法以外のあらゆる治療を行った。それぞれ3ヶ月間追跡し、予後をmodified Rankin scale(mRS)で評価し、mRS 2以下を予後良好群とした。Secondary endpointとして、mRS 1以下の症例を検討した。安全性に関しては、安全監視委員会の監督の下、有害事象検証委員会を組織した。倫理面への配慮も重視し、参加施設には倫理委員会での承認を義務づけた。適宜班会議・全体会議等で倫理的問題点がないことを検討した。
結果と考察
急性期ランダム化・診断法の標準化などをまず確立した。最も適切と考えられる適応、急性期に行う適応決定の為の検査法,血管内治療手技を標準化することができた。
最終的に280症例が仮登録され、そのうち102例が本登録された。現在の所死亡率に有意差を認めていない。家庭内自立率は対照群で40.0%、療法群で46.7%であり、療法群に多い傾向を示した。さらに社会復帰率に関しては,対照群で20.0%、療法群で37.8%と、より療法群が良好である傾向が示された。
また安全性に関して、症状悪化を伴う頭蓋内出血の頻度は療法群に多いものの、対照群との差は有意ではなく、従来の研究と比較して許容範囲内であった。今後計画通りの症例数があれば、仮説の検証が可能となると期待される。
結論
本研究において脳梗塞診断手法の標準化、急性期ランダム化システムを確率できた。さらに脳梗塞急性期に局所線溶療法を行うことにより、社会復帰率を改善できる可能性が示唆された。

公開日・更新日

公開日
2005-05-27
更新日
-