子宮頸がんの予後向上を目指した集学的治療法における標準的化学療法の確立に関する研究

文献情報

文献番号
200401411A
報告書区分
総括
研究課題名
子宮頸がんの予後向上を目指した集学的治療法における標準的化学療法の確立に関する研究
課題番号
-
研究年度
平成16(2004)年度
研究代表者(所属機関)
櫻木 範明(北海道大学大学 院医学研究科)
研究分担者(所属機関)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 がん臨床研究【若手医師・協力者活用等に要する研究】
研究開始年度
平成16(2004)年度
研究終了予定年度
平成17(2005)年度
研究費
7,863,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
 子宮体癌にたいする手術治療と補助療法の標準化をめざした多施設共同研究を立案する。予後不良体癌の層別化因子と分子マーカーを探る。
 子宮頸癌に対し術後の長期的QOL改善を考慮した手術療法を確立するとともに、局所進行頸癌患者の予後改善のための集学的治療法を探索する。
研究方法
骨盤ならびに傍大動脈リンパ節郭清を含む手術療法と術後化学療法により治療した体癌の予後因子と層別化のための病理組織学的因子や分子病理学的因子を検討する。
 卵巣温存、腟断端開放、自律神経温存などの機能温存術式を併用した広汎子宮全摘術を施行した浸潤頸癌患者の予後因子と術後卵巣機能や排尿機能を明らかにする。
結果と考察
 結果:体癌では筋層浸潤や分化度以外に組織型、脈管侵襲、リンパ節転移が重要な予後因子である。リンパ節転移陽性体癌の予後を規定するものは傍大動脈リンパ節転移部位数と脈管侵襲の程度である。ドミナントネガティブ作用をもつp53変異はリンパ節転移や組織型とならんで重要な予後因子であり、進行体癌の予後を規定する最も重要な因子であった。

広汎子宮全摘術施行Ib期-IIb期頸癌症例の多変量解析により、組織型、脈管侵襲、子宮傍結合織浸潤、リンパ節転移が独立予後因子であることが明らかとなった。これらの因子により、予後良好群、中間群、不良群に分けることが可能であり、予後良好群には術後補助療法を省略できる可能性が示された。
 Ib期-IIb期頸癌に対して骨盤自律神経を系統的に温存した。その結果、予後に悪影響を及ぼすことなく良好な術後の長期的排尿機能改善が認められた。

 考察:予後不良体癌の層別化因子の研究を進めるべきである。体癌の予後層別化に有用な分子マーカーとしてp53変異は有力な候補であるが、今後新しい分子標的治療のターゲットとなりうるかについて研究をさらに進める必要がある。
 Ib期-IIb期頸癌の標準治療である広汎子宮全摘術に際しては、卵巣温存や神経温存を図ることが術後の長期的QOL改善のために有用であると考えられる.
結論
 手術術式の工夫、術者の熟練、基礎研究と臨床研究の双方向のトランスレーショナル研究などを指向した臨床研究チームの整備が今後の婦人科癌治療の向上に重要である。体癌の標準治療はまだ確立されておらず多施設共同臨床試験により治療の標準化をめざすことが望まれる。頸癌治療に際しては生命予後とともにQOL改善をめざした治療法の確立を進める必要がある。

公開日・更新日

公開日
2005-04-28
更新日
-