成人T細胞白血病(ATL)をモデルとしたウイルス感染関連がんに対する革新的治療法の開発

文献情報

文献番号
200400508A
報告書区分
総括
研究課題名
成人T細胞白血病(ATL)をモデルとしたウイルス感染関連がんに対する革新的治療法の開発
課題番号
-
研究年度
平成16(2004)年度
研究代表者(所属機関)
岡村 純(独立行政法人国立病院機構九州がんセンター 臨床研究部)
研究分担者(所属機関)
  • 神奈木真理(東京医科歯科大学 大学院研究科 免疫治療学分野)
  • 松岡 雅雄(京都大学ウイルス研究所)
  • 原田 実根(九州大学医学部 病態修復内科)
  • 朝長万左男(長崎大学医学部 原研内科)
  • 木村 暢宏(福岡大学医学部 第一内科)
  • 宇都宮 與(慈愛会今村病院分院 血液内科)
  • 谷口 修一(虎の門病院 血液内科)
  • 田野崎隆二(国立がんセンター中央病院 臨床検査部)
  • 増田 昌人(琉球大学医学部 第二内科)
  • 鵜池 直邦(独立行政法人国立病院機構九州がんセンター 血液内科)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 がん臨床研究
研究開始年度
平成16(2004)年度
研究終了予定年度
平成18(2006)年度
研究費
30,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
ATLへ対するミニ移植療法の開発とその確立を目指す。
研究方法
ミニ移植療法の実施:1)第1期臨床試験長期生存例の追跡、2)第2期臨床試験、3)第3期臨床試験案の検討、4)臍帯血を利用したミニ移植療法の検討を行った。第2期臨床試験では、フルダラビン、ブスルファンによる前処置後に、HLA型一致同胞から末梢血幹細胞を移植し、本療法の安全性と有効性を検討した。移植対象は、急性型およびリンパ腫型ATLで通常の同種造血幹細胞移植の適応にならない症例で、主要評価項目は移植片生着と100日以内の移植関連合併症死亡とした。 
移植療法に伴う基礎的解析:HTLV-Iプロウィルス量動態、移植後キメラ、T細胞免疫応答、 HTLV-Iの分子生物学的解析およびT細胞抗原受容体(TCR)Vレパートリーによる微少残存白血病(MRD)を検討した。
結果と考察
1)移植後3年以上経過した長期生存5例に新たなイベントは発生せず、プロウイルス量は低値のまま推移した。2)第2期臨床試験では10例が移植を終了した。早期移植関連合併症が1例に発生したが生着や前処置関連毒性には問題なく進行した。3)第3期臨床試験コンセプトを検討し、主要評価項目は奏功率、予定症例数は30例とした。4)臍帯血ミニ移植後の生着はスムーズであった。
2) 移植療法に伴う基礎的解析:過半数例で、プロウイルス量はミニ移植後1-3ヶ月で測定感度以下に低下し、抗ウイルス効果が示唆された。キメラ解析により全例でドナー・レシピエントの識別が可能であった。本移植後には、CD8陽性HTLV-I Tax特異的CTLが存在する症例があり、その多くは単一のエピトープに強い反応性を示した。1日培養した末梢血ATL細胞にTax およびGag蛋白の発現が認められた。5’側long terminal repeatを欠く2型欠損型プロウイルスはキャリアに比べATL症例で高頻度であり、ゲノムへの組み込み前に形成されていることが示された。10-4-10-6で認識できるMRDの半定量化システムを確立した。
以上の結果から、高齢層ATLに対するミニ移植療法の安全性が示され、移植片対ATL効果や坑ウイルス効果が示唆された。
結論
本移植法は有望な治療法であることが明らかとなり、がん疾患のみならず、移植後ウィルス感染症、HIVやC型肝炎などの難治感染症に対しても応用が可能となる可能性がある。

公開日・更新日

公開日
2005-04-07
更新日
-