地域がん登録の法的倫理的環境整備に関する研究

文献情報

文献番号
200400469A
報告書区分
総括
研究課題名
地域がん登録の法的倫理的環境整備に関する研究
課題番号
-
研究年度
平成16(2004)年度
研究代表者(所属機関)
丸山 英二(神戸大学大学院法学研究科)
研究分担者(所属機関)
  • 甲斐 克則(早稲田大学大学院法務研究科)
  • 寺沢 知子(摂南大学法学部)
  • 山下  登(神戸学院大学法学部)
  • 田中 英夫(大阪府立成人病センター調査部調査課)
  • 掛江 直子(国立成育医療センター研究所成育政策科学研究部)
  • 松田 智大(国立保健医療科学院疫学部)
  • 増成 直美(財団法人放射線影響研究所)
  • 旗手 俊彦(札幌医科大学医学部医学科)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 第3次対がん総合戦略研究
研究開始年度
平成16(2004)年度
研究終了予定年度
平成18(2006)年度
研究費
12,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
 本研究の目的は,地域がん登録について,精度向上の観点と,個人情報保護やインフォームド・コンセントの理念などの法的倫理的観点から,そのあり方を指針のかたちで提示することによって,国民の理解と信頼のもとで実施されるがん登録事業を推進することである。その目的のために,わが国のがん登録の実情を調査するとともに,海外の主要国のがん登録事業および国際がん登録協議会の実態・活動を把握し,それらについて法律,生命倫理の観点から検討する。
研究方法
 研究は,研究者各自の文献による検討のほか,地域がん登録全国協議会総会研究会・実務者研修会への参加,5回にわたり開催した研究班会議等におけるがん登録実務者からの聴き取り,そして海外の現地調査により行った。また,説明・同意のあり方に関して法哲学,生命倫理の観点から理論的検討を行った。
結果と考察
 1970年代に始まった欧米諸国の個人情報保護の動きは,1980年のOECD理事会勧告を経て1995年のEU(欧州連合)指令に至り,保護内容の標準化と,EU加盟国および関係諸国が国内法制をその水準へ適合させることを求めるに至った。そのような状況に照らして,本年度は,わが法制度の母法国であるドイツおよびフランス,そして,がん登録の制度整備が進んでいるとされるイギリス,アメリカに焦点を定めて,がん登録をめぐる法制度を調査した。その結果,もともと個人情報保護の要請が強いフランスやドイツにおいて,個人情報保護と精度の高いがん登録を両立させるために種々の工夫が払われているが,イギリスやアメリカにおいても,濃淡の差はあるものの,個人情報保護の影響ががん登録に及んでいることが見受けられた。とくに,独仏英米に共通して,がん登録のための情報提供に関する患者への説明に努力が積み重ねられており,現代において,その重要性が窺われた。
 また,がん登録の目的に照らして同意原則によらない制度を採用する前提として,患者情報漏洩のリスクのない機密保持の徹底と目的の公知化があげられるが,そのためには,登録義務の法制化がそのためのプロセスも含めて有効であると思われた。
結論
 がん登録のための情報提供に関する患者,さらにひろく社会への説明のあり方としてどのようなものが考えられるか,それを受けた患者・社会の姿勢はどのようなものと捉えられるか,17年度の研究はこれらの問題に焦点を定めて検討を進めることにしたい。

公開日・更新日

公開日
2005-06-20
更新日
-