がん医療経済と患者負担最小化に関する研究

文献情報

文献番号
200400465A
報告書区分
総括
研究課題名
がん医療経済と患者負担最小化に関する研究
課題番号
-
研究年度
平成16(2004)年度
研究代表者(所属機関)
濃沼 信夫(東北大学大学院医学系研究科)
研究分担者(所属機関)
  • 田中憲一(新潟大学大学院医歯学総合研究科)
  • 西沢 理(信州大学医学部)
  • 江口研二(東海大学医学部)
  • 笹子 充(国立がんセンター)
  • 岡本直幸(神奈川県立がんセンター)
  • 中山富雄(大阪府立成人病センター)
  • 下妻晃二郎(流通科学大学サービス産業学部)
  • 濱島ちさと(国立がんセンター)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 第3次対がん総合戦略研究
研究開始年度
平成16(2004)年度
研究終了予定年度
平成18(2006)年度
研究費
14,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
近年、高額な抗がん剤や医療機器の登場、長い臨床経過などで患者の経済的負担は増大しつつある。本研究は、がん医療に投じられる資源に見合う成果が得られているかを医療経済学の立場から検証し、質、効率、安全に優れ患者負担が最小となるがん医療の実践に向けた基礎的資料を得ることを目的とする。
研究方法
1)倫理委員会の承認の下、大学病院、がんセンターなど全国20施設の外来を受診したがん患者を対象に、自己負担額(直接費用と間接費用)などに関するアンケート調査を実施した。
2)がん検診の費用に関するアンケート調査を19市で実施し、費用負担の妥当性を検討した。また、肺がんでのがん予防対策の費用効果分析、および多重ロジスティックモデルを用いてのターミナル患者の医療費分析を行った。
結果と考察
1)調査は回答数3,593名、回答率61.3%で、がん罹患による仕事への影響および経済的な影響は少なくない。1年間の支払平均額を部位別にみると、外来で胃13.5万円、大腸32.1万円、肺22.8万円、乳房24.6万円、入院で胃36.2万円、大腸56.9万円、肺54.1万円、乳房34.6万円などである。1年間の間接費用は、全がんで、健康食品・民間療法20.7万円(該当割合61.2%)、その他12.6万円(39.5%)、民間保険料25.1万円(84.7%)である。高額療養費の割合は48.7%、償還額は26.0万円である。経済的負担について病院から十分な説明を受けたとの回答は25.4%、説明はなかったは54.6%である。
2)中高年に対するがんの一次予防と二次予防の効果を比較したところ、肺がんの場合10年という短期間では二次予防の効果が大きかった。
3)ターミナル期のがん患者の医療費を多変量解析の手法で解析したところ、1?2ヶ月の短期入院で死亡したがん患者の医療費請求点数が多いことが判明した。
結論
1)がん治療には患者の経済的な負担に十分な配慮を行うとともに、その軽減に向けた具体的な対策が検討される必要がある。患者の負担が最小となるような医療の実践に向け、がんの医療経済はその重要性が増している。
2)一部の市町村を対象とした調査では、老人保健事業による検診費用の設定は一様ではなく、自己負担額も大きく異なっていた。
3)高齢者に対するがん予防としての禁煙対策は、効果が期待できなことが示唆される一方、若年層には禁煙指導に重点を置く方が将来の大きな効果が期待される。
4)ターミナル期の医療費の分析から、積極的治療から緩和ケアへの移行時期の鑑別診断技法の開発が重要と思われる。

公開日・更新日

公開日
2006-01-05
更新日
-