ウイルスを標的とする発がん予防の研究

文献情報

文献番号
200400445A
報告書区分
総括
研究課題名
ウイルスを標的とする発がん予防の研究
課題番号
-
研究年度
平成16(2004)年度
研究代表者(所属機関)
神田 忠仁(国立感染症研究所)
研究分担者(所属機関)
  • 下遠野 邦忠(京都大学ウイルス研究所)
  • 宮村 達男(国立感染症研究所)
  • 林  紀夫(大阪大学大学院医学系研究科)
  • 松浦 善治(大阪大学微生物病研究所)
  • 井廻 道夫(昭和大学医学部)
  • 加藤 宣之(岡山大学大学院医学総合研究科)
  • 内田 茂治(東京都西赤十字血液センター)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 第3次対がん総合戦略研究
研究開始年度
平成16(2004)年度
研究終了予定年度
平成18(2006)年度
研究費
66,500,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
子宮頸がんを起こす発がん性ヒトパピローマウイルス(HPV)の感染予防ワクチンを開発する。粘膜基底細胞に持続感染するHPV生活環に介入し、感染細胞を排除する方法を開発する。肝がん発症の危険因子であるC型肝炎ウイルス(HCV)の細胞への吸着・侵入・複製、粒子形成を阻害する方法を探る。免疫系によるHCV排除の方法を開発する。輸血によるHBV、HCV、ヒトリンパ球向性ウイルス(HIV、HTLV-1)感染の実状を明確にする。
研究方法
 HPV感染患者血清中の抗HPV抗体と中和活性を調べた。発がん性HPVに共通の感染防御エピトープ(L2エピトープ)を持つキメラキャプシドを作り、抗原性を調べた。転写因子C/EBPβのHPVプロモーターへの影響を調べた。
 HCVキャプシドの培養細胞への結合を解析した。HCVゲノムの5’末端の構造を調べた。HCVゲノムが自律的に複製するヒト肝がん由来細胞におけるインターフェロン(IFN)関連のシグナルを解析した。C型慢性肝炎患者末梢血の樹状細胞(DC)のTh1誘導能を調べた。 
結果と考察
 L2-エピトープを持つキメラキャプシドをマウスに免疫すると複数の発がん性HPVに結合する抗体を誘導した。HPVが感染しても、中和抗体を持たない患者があった。CEBPβがHPV後期プロモーターを活性化した。
 線維芽細胞成長因子受容体、FGFR-5が HCVの感染受容体分子である。HCVゲノムの5’末端はリン酸が付加した状態になっていた。HCVゲノムの自己複製細胞では、自然免疫機構によってゲノム複製が抑制された。C型慢性肝炎患者のDCはTh1誘導能の亢進が無かった。リバビリン投与でTh1誘導能が亢進する症例ではHCVが排除された。C型急性肝炎患者で新たなHCV特異的CTLエピトープを同定した。
 日赤による遡及調査で、低濃度HBVキャリア献血者からの感染例が判明した。
結論
 L2-エピトープを持つキメラキャプシドは、複数の発がん性HPV感染予防ワクチンの候補である。HPV自然感染で中和抗体を誘導できない患者を対象にした臨床試験を計画する。
 HCVの感染受容体分子はFGFR-5である。自然免疫がHCVゲノム複製を強く抑制する。C型慢性肝炎患者ではDCのIFNα反応性Th1誘導能が低下しており、リバビリンはTh1誘導能を回復させる。

公開日・更新日

公開日
2005-03-28
更新日
-