がん化学予防剤の開発に関する基礎及び臨床研究

文献情報

文献番号
200400444A
報告書区分
総括
研究課題名
がん化学予防剤の開発に関する基礎及び臨床研究
課題番号
-
研究年度
平成16(2004)年度
研究代表者(所属機関)
若林 敬二(国立がんセンター研究所がん予防基礎研究プロジェクト)
研究分担者(所属機関)
  • 奥坂 拓志(国立がんセンター中央病院第一領域外来部胆・膵臓科)
  • 石川 秀樹(兵庫医科大学消化器内科兼先端医学研究所家族性腫瘍部門)
  • 徳留 信寛(名古屋市立大学大学院医学研究科健康増進・予防医学分野)
  • 田中 卓二(金沢医科大学病理学第一講座)
  • 堤 雅弘(奈良県立医科大学腫瘍病理)
  • 白井 智之(名古屋市立大学大学院医学研究科病態病理学講座)
  • 塚本 徹哉(愛知県がんセンター研究所腫瘍病理学部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 第3次対がん総合戦略研究
研究開始年度
平成16(2004)年度
研究終了予定年度
平成18(2006)年度
研究費
100,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
本研究は、がんハイリスクグループにおける発がん要因の把握と、食品素材、医薬品を対象としたがん予防剤の開発、がん予防方法の確立を行い、臨床応用を目的とする。
研究方法
LPL活性化剤NO-1886をMinマウスに投与し、血清脂質値、腸ポリープ数を検討した。F344ラットにCOX-1、-2選択的阻害剤及び両酵素阻害剤を投与し、4-NQO誘発舌扁平上皮発がんヘの抑制効果を検討した。サメ軟骨水抽出画分のハムスター膵発がんに対する影響を検討した。前立腺発がんモデル動物(PB/SV40Tラット)を用い、γ-トコフェロールの腫瘍ヘの影響を検討した。C型慢性肝炎患者に対するラクトフェリン(LF)の効果をランダム化二重マスク化プラセボコントロ-ル試験にて解析中である。胃型、腸型、胃腸混合型、EBV陽性胃がんにおけるMUC5AC、MUC6、Sox2、MUC2、Cdx1/2の発現を検討した。FAP患者を対象とし、緑茶抽出物、乳糖錠を用いる二重盲検法による無作為割付試験を実施中である。
結果と考察
NO-1886投与により、Minマウスにおける高い血清脂質値の低下と、腸ポリープ形成抑制が認められた。COX-1、-2選択的阻害剤 及び両酵素を阻害作用する抗炎症剤は4-NQO誘発ラット舌がん発生頻度を低下させた。サメ軟骨抽出物(プロテオグリカン)にハムスター膵臓発がん抑制作用がある事が見い出された。PB/SV40Tラットにγ-トコフェロールを投与すると、前立腺の腹・背葉において、腫瘍増殖抑制効果とCaspase活性化が認められた。LFのC型慢性肝炎患者に対するHCV RNA量及びGPT値の抑制作用に関するデータを多施設共同で集め、そのデータを解析中である。 胃幽門部腺管における腸上皮化生がGI-mixed typeからI typeへと進行するに従い、Sox2の発現低下とCdx1/2の異所性発現が見い出され、また胃がんにおいても同様な発現変化が認められた。大腸がん高危険度群であるFAP患者に対する緑茶抽出物を用いた発がん予防介入試験が進行中である。
結論
腸ポリープ発生と血清脂質値の上昇にLPLの関与が示唆された。舌発がんにおいてCOX-2に加え、COX-1選択的阻害剤投与も有効であることが示された。前立腺発がんにおけるγ-トコフェロールの発がん抑制標的が新たに示唆された。形質の異なる胃がんにおける分化関連遺伝子の発現変化が見い出された。これら基礎資料をもとに行われているラクトフェリン、緑茶抽出物を用いた介入研究において得られる成果は、今後のがん予防研究にとって有意義なデータとなる。

公開日・更新日

公開日
2005-04-28
更新日
-