がんの臨床的特性に関する分子情報に基づくがん診療法の開拓的研究

文献情報

文献番号
200400439A
報告書区分
総括
研究課題名
がんの臨床的特性に関する分子情報に基づくがん診療法の開拓的研究
課題番号
-
研究年度
平成16(2004)年度
研究代表者(所属機関)
吉田 輝彦(国立がんセンター研究所(腫瘍ゲノム解析・情報研究部))
研究分担者(所属機関)
  • 落合 淳志(国立がんセンター研究所支所(臨床腫瘍病理部))
  • 市川 仁(国立がんセンター研究所(腫瘍発現解析プロジェクト))
  • 菅野 康吉(栃木県立がんセンター研究所(がん遺伝子研究室・がん予防研究室))
  • 青木 一教(国立がんセンター研究所(がん宿主免疫研究室))
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 第3次対がん総合戦略研究
研究開始年度
平成16(2004)年度
研究終了予定年度
平成18(2006)年度
研究費
71,250,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
重要な臨床的特性を規定する分子情報を確定してがん診療の標的を同定、新たな診療法を開拓・検証することを目指す。具体的には(1)食道がん等の治療前生検組織解析による放射線化学療法(CRT)等の治療感受性の予知、(2)AMLの発症・悪性化に働く分子経路の解明と新規治療標的分子の同定、(3)膀胱がんの染色体欠失等の遺伝子異常の解析による予知医療の開発、(4)腫瘍局所への同種主要組織適合抗原(MHC)遺伝子導入と同種造血幹細胞移植併用による複合療法の開発。
研究方法
(1)CRT施行食道がん患者の治療前生検材料の遺伝子発現プロファイルを基に線形判別式を複数構築し、評価した。組織中の血管を画像処理するシステムを構築した。(2)AMLの遺伝子発現プロファイルから、染色体異常相関遺伝子を抽出し、各種機能解析を行った。(3)表在性膀胱がんを対象として各種マーカーやSNPアレイを用いてLOHを解析した。(4)マウス同種造血幹細胞移植モデルを作り、同種MHC抗原発現プラスミドを腫瘍内局注する複合療法を評価した。
結果と考察
(1)CRTの予後予測の線形判別器の平均正解率は約50%であり、得られたサンプルサイズが小さすぎると考え、新たな前向き臨床試験の研究計画を策定した。これまで主観的であった生検組織を用いた腫瘍内血管密度解析を客観化するシステムを構築、今後CRT奏効性との相関を検討する。(2)AMLにおけるt(8;21)転座相関遺伝子とinv(16)逆位相関遺伝子を同定し、造血幹細胞特異的遺伝子を含む多くの重複があること、両転座によるキメラ転写因子は下流標的遺伝子をかなり共有し、少なくともその一つが造血幹細胞の自己複製を促進して白血病化に関与していることを示唆した。(3)表在性膀胱がんにおけるLOHは再発リスク等の推定に有用な指標と考えられた。尿、生検組織等の臨床検体由来の微量DNAに対する遺伝子検査の精度を評価するシステムを考案した。(4)同種MHC抗原遺伝子導入と、同種造血幹細胞移植の併用により、明らかな抗腫瘍効果の増強を認めたが、GVHDの増悪は認めなかった。
結論
生検試料等の分子情報を用いて食道がんCRTの予後を予知する方法の開発基盤ができた。白血病のサブタイプ特異的な分子経路を見出した。尿等由来の微量DNAに対して膀胱がんのLOH解析を行い、再発等のリスクを評価する可能性を示した。新しい免疫遺伝子・細胞複合療法の前臨床研究をほぼ終了した。

公開日・更新日

公開日
2005-04-08
更新日
-