がんの生物学的特性の分子基盤の解明とその臨床応用に関する研究

文献情報

文献番号
200400438A
報告書区分
総括
研究課題名
がんの生物学的特性の分子基盤の解明とその臨床応用に関する研究
課題番号
-
研究年度
平成16(2004)年度
研究代表者(所属機関)
横田 淳(国立がんセンター研究所生物学部)
研究分担者(所属機関)
  • 清野 透(国立がんセンター研究所)
  • 落谷 孝広(国立がんセンター研究所)
  • 堺 隆一(国立がんセンター研究所)
  • 神奈木 玲児(愛知県がんセンター研究所)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 第3次対がん総合戦略研究
研究開始年度
平成16(2004)年度
研究終了予定年度
平成18(2006)年度
研究費
85,500,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
本研究の目的は、浸潤能・転移能・血管新生能など、多様性のあるがんの生物学的特性をがん細胞内のゲノム異常、遺伝子発現異常との対応で把握し、がんの個性診断法と新規標的療法の開発に有用な分子情報を得ることである。
研究方法
正常ヒト上皮細胞や各種幹細胞を用いて、ヒトがんで見られる遺伝子異常を再構築して不死化、がん化、がんの悪性化過程を再現するとともに、ヒトがん細胞における遺伝子異常を修復してがん形質を抑制することにより、がんの生物学的特性発現の分子基盤を解明する。
結果と考察
肺がんの約10%で欠失・変異している遺伝子としてCBPを同定し、CBPは変異によって転写活性化能が低下していたことから、肺がんのがん抑制遺伝子と考えられた。肺がんのがん抑制遺伝子MYO18Bは大腸がんでも失活していることを見出した。ヒト細胞の不死化にはp16/RB経路の不活化とテロメラーゼの活性化が必要であることを確認した。テロメラーゼの活性化にはNFX-91のような転写抑制因子の不活化も関与していることを示した。E6/E7による染色体不安定性の誘導にはhWAPLの発現誘導が関与していることを示した。マウスES細胞などから単層培養での肝細胞分化誘導系を開発し、分化細胞の遺伝子発現プロファイルは肝細胞と酷似していることを確認した。ラットES細胞を樹立し,幹細胞形質の維持を確認した。悪性黒色腫におけるFyn-コルタクチン経路、骨肉腫におけるFyn-パキシリン経路など、腫瘍の組織系に特異的なチロシンキナーゼと基質が運動能・浸潤能に関わっていることを明らかにした。低酸素状態で発現するHIFは一連の糖鎖関連遺伝子の転写を誘導し、その結果、シアリルルイスx/a糖鎖の発現が亢進することが分った。今年度は基盤作りを中心に研究を進めたので、次年度はそれぞれの実験系から診断・治療の標的となる遺伝子の同定を目指す。また、同定された遺伝子は診断・治療への応用の可能性を追求していく。
結論
ヒト肺がんの特性と細胞不死化能を規定する新たな遺伝子を同定できた。また、上皮細胞とES細胞を用いた遺伝子の生物学的機能解析系が整いつつある。リン酸化蛋白質の網羅的解析法と糖鎖合成機構の系統的解析法も確立され、がんの生物学的特性の分子基盤解明に向けての研究体制ができあがった。

公開日・更新日

公開日
2005-04-28
更新日
-