ゲノム情報に基づいた個体発生と発がん・進展に関連する新規遺伝子の同定およびその機能的意義の解明と臨床応用に関する研究

文献情報

文献番号
200400436A
報告書区分
総括
研究課題名
ゲノム情報に基づいた個体発生と発がん・進展に関連する新規遺伝子の同定およびその機能的意義の解明と臨床応用に関する研究
課題番号
-
研究年度
平成16(2004)年度
研究代表者(所属機関)
中川原 章(千葉県がんセンター研究局)
研究分担者(所属機関)
  • 尾崎 俊文(千葉県がんセンター研究局 生化学研究部)
  • 竹永 啓三(千葉県がんセンター研究局 化学療法研究部)
  • 古関 明彦(理化学研究所免疫アレルギー科学総合研究センター)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 第3次対がん総合戦略研究
研究開始年度
平成16(2004)年度
研究終了予定年度
平成18(2006)年度
研究費
22,500,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
がんの個性は、それが由来する正常組織の発生生物学的特性に依存しており、そのことが、それぞれのがんの治療に対する反応性の違いに大きな影響を及ぼしている。そこで、ゲノム情報に基づいて、個体発生と発がん・進展に関連する新規遺伝子を同定及び機能解析し、それを臨床応用することを目的とした。また、個体発生に関連する遺伝子のなかで、既に発がんの制御に関わることが明らかになっている重要な遺伝子に関して機能の解析を行った。
研究方法
ゲノム異常の同定にはアレイCGH法、発現遺伝子の解析にはcDNAマイクロアレイ法を用いた。後者には、我々が神経芽腫から採取した5.300個のcDNAを搭載したin-house DNA chipを用いた。また、分子生物学的解析には、ノザンブロット、ウエスタンブロット、免疫沈降法、CHIPアッセイ、などを用いた。
結果と考察
243例の未治療神経芽腫を対象としたアレイCGH(comparative genomic hybridization)、および136例の原発性神経芽腫を対象にしたcDNAマイクロアレイ解析から、ゲノム異常と遺伝子発現様式の組み合わせにより、極めて精度の高い予後予測システムの構築が可能となった。また、ゲノム異常領域にマップされる神経芽腫候補遺伝子が同定された。さらに、個体発生に於いて重要な機能を有するp53ファミリー遺伝子に関し、DNA損傷時にp73が核内ATMおよびIKKαによりリン酸化修飾による活性化を受けることを明らかにした。一方、高転移性肺がん由来細胞株においてHIF1αが高発現していること、および、低酸素状態により我々が神経芽腫より同定した新規遺伝子NEDL1が発現誘導され、がん細胞の悪性度の規定に関与する可能性が示唆された。また、個体発生と発がんの制御に関連するポリコーム群遺伝子の解析から、Ring1BがヒストンH2Aをモノユビキチン化するE3リガーゼであることを明らかにした。
結論
ゲノム異常の様式と遺伝子発現プロファイルを重ね合わせることにより、個体発生と発がんに関連する新規遺伝子の同定が具体的になってきた。p53ファミリー遺伝子の解析結果および低酸素状態におけるHIF1α発現誘導と転移との関係は、新たな治療法開発へ繋がるものと期待された。

公開日・更新日

公開日
2005-12-12
更新日
-