ヒト腫瘍の発生と進展に関わる分子病態の解析とその臨床応用

文献情報

文献番号
200400435A
報告書区分
総括
研究課題名
ヒト腫瘍の発生と進展に関わる分子病態の解析とその臨床応用
課題番号
-
研究年度
平成16(2004)年度
研究代表者(所属機関)
立松 正衞(愛知県がんセンター研究所・腫瘍病理学部)
研究分担者(所属機関)
  • 瀬戸 加大(愛知県がんセンター研究所・遺伝子医療研究部)
  • 稲垣 昌樹(愛知県がんセンター研究所・発がん制御研究部)
  • 長田 啓隆(愛知県がんセンター研究所・分子腫瘍学部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 第3次対がん総合戦略研究
研究開始年度
平成16(2004)年度
研究終了予定年度
平成18(2006)年度
研究費
24,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
(a) 胃癌の腹膜転移および大腸がんのリンパ節転移の発生・進展の分子病態の解明とその臨床応用、(b)胃MALTリンパ腫に関与するAPI2-MALT1キメラ遺伝子の機能の解明およびびまん性大細胞型B細胞リンパ腫(DLBCL)の遺伝子異常の解明、(c)クロマチン構造を制御するヒストン修飾酵素HDAC class II遺伝子群およびRNA分解酵素Dicerの肺癌発症への関与とその分子機序の解明、(d) Aurora-B、などの分裂期キナーゼ群による細胞分裂期の染色体動態の制御機構およびがんにおける染色体不安定性の解明
研究方法
(a) GFP導入胃癌腹膜微小転移モデルと各種KOマウスを用いて胃癌腹膜転移の初期・進展過程をin vivoで解析する。また樹立した不死化リンパ管内皮細胞を用いて、大腸癌リンパ管新生の分子基盤をin vitroで解析する。(b) API2-MALT1キメラ遺伝子導入細胞株を樹立し、抗アポトーシス機能を検討する。BAC cloneを用いたarray CGH法を確立し、DLBCLのゲノム異常を解析する。(c) 肺癌検体を用いてHDAC9 isofrm3およびDicerのmRNA発現を定量、予後との関連を解析する。Dicer低発現とDNAメチル化の有無との関連を検討する。(d) Cdk1によるINCENPリン酸化部位に対する抗リン酸化抗体を用いた免疫染色やRNA干渉法によってCdk1によるリン酸化反応の細胞内局在と時期を特定し、その意義を解明する。
結果と考察
(a) 胃癌の腹膜微小転移は化学療法感受性が高く治療標的になること、TNF-αが播種性進展に関与することを明らかにした。不死化リンパ管内皮系を用いて新しい管腔形成因子を見いだした。 (b) API2-MALT1キメラ遺伝子の上皮、血液細胞への導入実験から同遺伝子の普遍的な抗アポトーシス機能を明らかにした。Array CGH法で13q31増幅と3p21欠失の領域からそれぞれの責任遺伝子を確定した。 (c) 肺がんにおいてHDAC9 isoform 3の高発現およびDicer低発現が予後不良因子となること、後者にDNAメチル化は関与しないことを明らかにした。 (d) Aurora-Bと複合体を形成しているINCENPがCdc2キナーゼによって分裂期前―中期にかけてリン酸化されること、このリン酸化はAurora-B・ Plk1の細胞内局在に重要な役割を担っている可能性を明らかにした。
結論
ヒト固形がん(胃大腸がん、肺がん)および造血器腫瘍の発生と進展の分子病態の一端を解明し、新しい診断、治療法開発のための基盤を構築した。

公開日・更新日

公開日
2005-04-07
更新日
-