ヒトがんで高頻度に変異の見られるがん関連遺伝子の発がんにおける意義の解明とその臨床応用に関する研究

文献情報

文献番号
200400434A
報告書区分
総括
研究課題名
ヒトがんで高頻度に変異の見られるがん関連遺伝子の発がんにおける意義の解明とその臨床応用に関する研究
課題番号
-
研究年度
平成16(2004)年度
研究代表者(所属機関)
田矢 洋一(国立がんセンター研究所放射線研究部)
研究分担者(所属機関)
  • 荒川 博文(国立がんセンター研究所生物物理部)
  • 北林 一生(国立がんセンター研究所分子腫瘍学部)
  • 原 英二(徳島大学ゲノム機能研究センター)
  • 北川 雅敏(浜松医科大学医学部生化学第一講座)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 第3次対がん総合戦略研究
研究開始年度
平成16(2004)年度
研究終了予定年度
平成18(2006)年度
研究費
66,500,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
非常に多くのヒトがんにおいて、p53とRB蛋白質を中心とした細胞周期、チェックポイント関連蛋白質に変異が起きていることがわかってきた。したがって、これらの蛋白質の生理機能を集中的に解析することによって、多くのヒトがんに共通した発がん機構を明らかにでき、新しいがん治療法開発への応用の道も開けると期待できる。本研究はそれを目指した。
研究方法
クラスリン重鎖上のp53とクラスリン軽鎖(CLC)の結合部位をマッピングするために、クラスリン重鎖のさまざまな領域の欠失変異体とGST-p53あるいはGST-CLCとの結合を調べた。また、FLAGタグを結合したMOZタンパク質をヒト細胞に強制発現させ、抗FLAG抗体を用いてMOZ複合体を精製し、質量分析によりMOZ結合タンパク質を同定した。
結果と考察
エンドサイトーシスに際して膜小胞の構造形成に重要な役割を演じることが知られているクラスリンの重鎖が、核内にも存在してp53と結合し、p53の転写活性化能に必須の働きをするという全く予想外のことを発見したしていたが、クラスリンの軽鎖とp53とがクラスリンの重鎖のC末端領域への結合で競合することを明らかにした。これはエンドサイトーシスとp53というこれまで全く関係ないと思われていた分野をつなぐ新しい研究分野が開かれると期待される。また、白血病関連因子MOZはp53と結合してアセチル化し、p53の標的遺伝子を制御することにより、細胞の増殖とアポトーシスを制御することが示された。一方、白血病関連融合タンパク質MOZ-CBPはp53を介した転写を抑制する。白血病において変異の見られるMOZ及びPMLはp53を介して作用することから、p53の機能異常が白血病発症に関与することが示唆された。さらには、Mdm2がRB蛋白質のユビキチンガーゼでもあることを見出し、それを証明した。したがって、p53とRBの二大癌抑制経路がのMdm2によって撹乱されることが示唆された。
結論
クラスリンとp53の結合は誰も予想していなかった新発見であり、今後、新しい研究分野を切り開くことになると思われる。白血病において変異の見られるMOZ及びPMLはp53を介して作用することから、p53の機能異常が白血病発症に関与することが示唆された。

公開日・更新日

公開日
2005-04-20
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

公開日・更新日

公開日
2006-02-03
更新日
-