動物モデルを用いた発がんの分子機構及び感受性要因の解明とその臨床応用

文献情報

文献番号
200400433A
報告書区分
総括
研究課題名
動物モデルを用いた発がんの分子機構及び感受性要因の解明とその臨床応用
課題番号
-
研究年度
平成16(2004)年度
研究代表者(所属機関)
中釜 斉(国立がんセンター研究所(生化学部))
研究分担者(所属機関)
  • 木南 凌(新潟大学 大学院医歯学総合研究科)
  • 山下 聡(国立がんセンター研究所(生化学部))
  • 杉江 茂幸(金沢医科大学)
  • 庫本 高志(京都大学 大学院医学研究科)
  • 中島 淳(横浜市立大学 大学院医学研究科)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 第3次対がん総合戦略研究
研究開始年度
平成16(2004)年度
研究終了予定年度
平成18(2006)年度
研究費
66,500,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
本研究は、発がんの動物モデルを用いて消化器がんを中心とした発がんの分子機構、特に初期段階における遺伝子変異や発現変化の解明、発がんに対する環境及び遺伝的修飾要因の同定、さらには個体レベルの発がん感受性要因を明らかにすることを目的とする。得られた成果をもとに、遺伝子情報に基づいた個人対応型のがん予防策の構築、がんの新規治療或いは予防薬開発のための標的候補分子の同定などへの臨床応用を目指す。
研究方法
変異スペクトラムが異なる大腸発がん性化合物PhIPとAOMの併用による大腸発がんの共同効果について検討した。大腸がん初期病変の検索にはメチレンブルーによる分別染色法(中釜—落合法)を用いた。大腸がんのマウス肝転移モデルを用いて、がんの浸潤・転移に対するPPARγ阻害剤の効果を検討した。大腸、胃、前立腺及びリンパ腫発がんに関する感受性要因に関しては、遺伝学的方法により染色体座を決定した。さらにコンジェニック系統を作成することにより原因遺伝子の局在を限定化し、各系統の感受性と当該領域のハプロタイプを総合評価することにより候補遺伝子を絞り込む事とした。
結果と考察
PhIPとAOMを併用することで異常腺窩巣(ACF)や大腸がんの誘発数に相乗効果を認めた。一部の腫瘍では、ヒト大腸がんに類似した、低分化で粘膜下組織への顕著な浸潤性進展を認めた。発がん剤併用により新規の遺伝子変化が負荷された可能性がある。PPARγ阻害剤により、大腸がん細胞の足場消失による細胞死の誘導、マトリゲル浸潤能の抑制、肝転移能の抑制が観察された。発がんの感受性遺伝子に関しては、ラット第16番染色体上のACF誘発感受性遺伝子Sctの局在候補を、D16Wox7〜D16Wox3及びD16Mit3-D16Rat17の数Mbの領域に絞り込んだ。リンパ腫感受性の候補遺伝子Mtf-1に関してはSer462Proの遺伝子多型を見出した。プロリン型Mtf-1は放射線による酸化ストレス等の作用を減弱し、リンパ腫発がんに対する抵抗性を賦与することが示唆された。この他、胃及び前立腺がんの感受性候補遺伝子として、それぞれCrabp2及びMme/Cdkn1a遺伝子を同定した。点変異及び欠失変異誘発によるラットの新規発がんモデルの作製に関しては、ENU及びCHLの至適投与量および使用系統を決定できた。
結論
発がんの動物モデルの構築とそれらを用いた遺伝学的解析は、ヒト発がんの分子機構や発がん感受性要因の解明に向けて補完的かつ不可欠な役割を担うものである。

公開日・更新日

公開日
2005-04-28
更新日
-