ヒト多段階発がん過程における遺伝子異常の把握に基づいたがんの本態解明とその臨床応用に関する研究

文献情報

文献番号
200400432A
報告書区分
総括
研究課題名
ヒト多段階発がん過程における遺伝子異常の把握に基づいたがんの本態解明とその臨床応用に関する研究
課題番号
-
研究年度
平成16(2004)年度
研究代表者(所属機関)
広橋 説雄(国立がんセンター研究所)
研究分担者(所属機関)
  • 坂元 亨宇(慶應義塾大学 医学部)
  • 稲澤 譲治(東京医科歯科大学 難治疾患研究所)
  • 細田 文恵(国立がんセンター研究所 分子腫瘍学部)
  • 村上 善則(国立がんセンター研究所 がん抑制ゲノム研究プロジェクト)
  • 牛島 俊和(国立がんセンター研究所 発がん研究部)
  • 金井 弥栄(国立がんセンター研究所 病理部)
  • 今井 浩三(札幌医科大学 医学部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 第3次対がん総合戦略研究
研究開始年度
平成16(2004)年度
研究終了予定年度
平成18(2006)年度
研究費
150,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
諸臓器のがんにおいて遺伝子の発現異常ならびにジェネティック・エピジェネティックな遺伝子異常を網羅的に解析し、臨床病理学的因子との相関を詳細に検討することで、がんの遺伝子型と表現型の相関 (genotype-phenotype correlation)を明らかにして、ヒトの諸臓器における多段階発がん過程のシナリオの全貌を解明する。
研究方法
全染色体を4500個のBACクローンでカバーする高密度アレイを開発して、諸臓器のがんにおいて比較ゲノムハイブリダイゼーション解析を行い、ゲノム構造異常の全体像とがんの臨床病理学的因子の相関を検討した。諸臓器のがんにおいて、がん克服戦略研究事業において同定したがん関連遺伝子TSLC1・アクチニン-4・ディスアドヘリン等の発現・発現制御機構・機能・がんにおける異常等の解析を行った。DNAメチル化異常の網羅的解析による病態診断の指標を探索し、発がん過程におけるDNAメチル化制御機構の異常の解析を行った。
結果と考察
がんで高頻度にコピー数の減少・増加を示す微小染色体領域を多数同定した。肝がんにおけるウイルス感染・予後と相関するゲノム構造異常や、肺腺がんにおける性差・喫煙歴・予後・EGF受容体遺伝子変異の関与する発がん経路と相関するゲノム構造異常を見出した。DAL-1のDNAメチル化が、肺がんの予後不良因子となることを示した。Poly(ADP-ribose) polymerase-1(PARP-1)が、TCF-4と結合してβ-カテニン・TCF-4複合体の転写活性を増強し、大腸発がん早期に寄与する可能性がある。アクチニン-4・ディスアドヘリンは、アクチン細胞骨格を制御して細胞運動能を亢進させ、がん転移に寄与すると考えられた。実際、それらの高発現は臨床症例の予後不良因子となった。神経芽腫の予後マーカーとして有用なDNAメチル化プロファイルを同定した。CpGアイランド内にde novoのメチル化が蓄積するような、DNAメチル化状態伝達の忠実度が低下したがん細胞株が存在することを示した。DNMT1の発現亢進はde novoメチル化に帰結し、DNMT3b4の過剰発現は染色体不安定性の惹起と遺伝子発現変化に結びついて発がん早期に寄与すると考えられた。
結論
がんの病理像と遺伝子・分子・細胞レベルの変化との対応の理解が進み、新しいがんの病態診断や標的治療の基盤となる知見が得られた。

公開日・更新日

公開日
2005-04-11
更新日
-