先天性心疾患における大血管狭窄に対するカテーテルインターベンションによる拡大術の短・長期予後に関する多施設共同研究

文献情報

文献番号
200400427A
報告書区分
総括
研究課題名
先天性心疾患における大血管狭窄に対するカテーテルインターベンションによる拡大術の短・長期予後に関する多施設共同研究
課題番号
-
研究年度
平成16(2004)年度
研究代表者(所属機関)
越後 茂之(国立循環器病センター小児科)
研究分担者(所属機関)
  • 石澤 瞭(国立成育医療センター)
  • 石川 司朗(福岡市立こども病院)
  • 中西 敏雄(東京女子医科大学)
  • 中村 好一(自治医科大学)
  • 小林 俊樹(埼玉医科大学)
  • 黒江 兼司(葉山ハートセンター)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 小児疾患臨床研究
研究開始年度
平成14(2002)年度
研究終了予定年度
平成16(2004)年度
研究費
20,400,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
先天性心疾患における肺動脈や大動脈などの大血管狭窄に対して行われているカテーテルインターベンションについて、エビデンスに基づく治療指針を作成することが本研究の目的である。
研究方法
多施設共同研究として、後方視的研究ならびに前方視的研究を行う。
結果と考察
末梢肺動脈狭窄に対するバルーン血管形成術の後方視的検討ならび前方視的検討では、バルーン血管形成術直後に径が50%以上増加して有効と判断した部位は、それぞれ全体の38%と25%であり、十分な径の増加が得られた狭窄部は多くなかった。後方視的検討において経過観察後に著明な再狭窄を認めた例はなく、逆に径の増加を認める場合があった。ステント留置についての後方視的検討ならびに前方視的検討では、バルーン血管形成術直後に径が50%以上増加して有効と判断した部位は、それぞれ全体の62%と100%であった。後方視的検討においては、血管内膜の増殖などによる再狭窄が生じた部位もみられたが、65%の狭窄部において術前径の50%以上の増加を得た。
 大動脈縮窄に対するバルーン血管形成術の後方視的検討ならびに前方視的検討では、残存圧較差20mmHg未満且つ30%以上の圧較差減少が認められて、有効と判断した部位はそれぞれ全体の50%と100%であった。後方視的検討では、著明な再狭窄を認めた例はなかった。ステント留置術の後方視的検討ならびに前方視的検討では、有効と判断した部位はそれぞれ全体の92%と100%であった。後方視的検討の経過観察後では、いずれの症例も圧較差は20mmHg未満であった。前方視的検討の経過観察後で、血管内膜増殖による著明な再狭窄が生じた症例が認められた。
結論
末梢肺動脈狭窄に対するバルーン血管形成術は、十分な効果が得られない部位が多かったが、経過観察後に再狭窄を来す部位は少なく、さらに径の増加を認める場合があった。ステント留置術では、術直後は有効な部位がバルーン血管形成術に比して相当多くみられたが、径観察後は一部に血管内膜増殖による再狭窄がみられた。
 大動脈縮窄に対するバルーン血管形成術は、十分な効果が得られない症例が少なからずみられた。ステント留置術では、術直後はほぼ全例で有効であったが、年少児では経過観察後に血管内膜増殖による再狭窄を認めた。

公開日・更新日

公開日
-
更新日
-

文献情報

文献番号
200400427B
報告書区分
総合
研究課題名
先天性心疾患における大血管狭窄に対するカテーテルインターベンションによる拡大術の短・長期予後に関する多施設共同研究
課題番号
-
研究年度
平成16(2004)年度
研究代表者(所属機関)
越後 茂之(国立循環器病センター小児科)
研究分担者(所属機関)
  • 石澤 瞭(国立成育医療センター)
  • 石川 司朗(福岡市立こども病院)
  • 中西 敏雄(東京女子医科大学)
  • 中村 好一(自治医科大学)
  • 小林 俊樹(埼玉医科大学)
  • 黒江 兼司(兵庫県立こども病院)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 小児疾患臨床研究
研究開始年度
平成14(2002)年度
研究終了予定年度
平成16(2004)年度
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
先天性心疾患における肺動脈や大動脈などの大血管狭窄に対して行われているカテーテルインターベンションについて、エビデンスに基づく治療指針を作成することが本研究の目的である。
研究方法
多施設共同研究として、後方視的研究ならびに前方視的研究を行う。
結果と考察
末梢肺動脈狭窄に対するバルーン血管形成術は、十分な効果が得られない部位が多かったが、経過観察後に再狭窄を来す部位は少なく、逆に径の増加を認める場合があった。狭窄部径の270%以下のバルーン径では、有効な径の増加が得られなかった。ステント留置術では、術直後は有効な結果を得た部位がバルーン血管形成術に比して相当多くみられたが、一部は血管内膜増殖による再狭窄を認めた。
 大動脈縮窄に対するバルーン血管形成術は、十分な効果が得られない症例がかなりみられた。ステント留置術では、術直後はほぼ全例で有効な結果を得たが、年少児では経過観察後に血管内膜増殖による再狭窄を認めた。
結論
末梢肺動脈狭窄に対する第一選択の治療法は、原則として最狭部径の270-500%のバルーンによる血管形成術を行う。有効でない症例については、数か月の経過観察後に血管造影を行って狭窄部径の拡大が術前の50%未満、又は片側末梢肺動脈狭窄における肺血流シンチの患/健側肺血流比が0.4%未満であれば、初回より大口径のバルーン、高耐圧のバルーン、カッティングバルーン、あるいはステントを用いて、インターベンションを再施行する。
 大動脈縮窄に対する第一選択の治療法は、体重によって異なる。体重40kg以上の症例については、大動脈縮窄のステント挿入に必要な径の大腿動脈シースを留置しても大腿動脈損傷の可能性は高くないと判断した。したがって、十分な圧較差減少を得るほか、縮窄部位の大動脈瘤や内膜フラップの発生を防止するためにも、第一選択の治療法としてステント留置術を行う。体重40kg未満の症例については、第一選択の治療法として横隔膜部位に大動脈径より小さく、且つ最狭部径の300%以下のバルーンよる血管形成術を行う。有効でない症例については、数か月の経過観察後に心臓カテーテル検査を行い、残存圧較差が20mmHg以上であれば再バルーン血管形成術または外科手術を行う。ステント留置は、バルーンの効果が期待できない症例に対する緊急避難的処置とするのが適切と考える。

公開日・更新日

公開日
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更新日
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