乳幼児健康診査における高機能広汎性発達障害の早期評価及び地域支援のマニュアル開発に関する研究

文献情報

文献番号
200400408A
報告書区分
総括
研究課題名
乳幼児健康診査における高機能広汎性発達障害の早期評価及び地域支援のマニュアル開発に関する研究
課題番号
-
研究年度
平成16(2004)年度
研究代表者(所属機関)
神尾 陽子(国立大学法人九州大学 人間環境学研究院)
研究分担者(所属機関)
  • 内山登紀夫(大妻女子大学 人間関係学部)
  • 納富恵子(福岡教育大学 障害児教育講座)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 子ども家庭総合研究
研究開始年度
平成16(2004)年度
研究終了予定年度
平成16(2004)年度
研究費
4,500,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
幼児期に適切な診断ができず後に社会的不適応が深刻となる高機能広汎性発達障害(以下、High-Functioning Pervasive Developmental Disorders: HFPDDと表記)の児とその家族に対する地域ベースの早期介入を可能とする早期評価システムの確立を最終目標とする。本研究は、1) 家族がアクセスしやすい1歳半健康診査の場を活用して、問診票と聴き取り、行動観察から成るPDDに特化した評価システムを導入し精度の高い早期診断を提供する、2) 評価システムの信頼性と妥当性の検証、3) 他地域の乳幼児健診への導入を想定して、多職種チーム(保健師・心理職・言語療法士・小児科医・児童精神科医)に向けての実践的マニュアルの基礎資料を提供する、ことを目的とするものである。
研究方法
手続きは、①第1段階: 1:6健診の問診時に、23項目(Modified Checklist for Autism in Toddlers: M-CHAT )から成る質問紙を用いてハイリスク児をスクリーニングする。②第2段階:健診から1,2ヶ月後に多職種チームにより電話面接を行い、前回不通過であったM-CHAT項目の近況について聴取を行い、再評価する。③第3段階:2歳時に児童精神科医・心理職・保健師チームによる半構造化された親面接と自由遊びまたは構造化された遊び場面での児の行動観察、発達検査を実施する。
結果と考察
第1段階では全体の約20%に相当するFAIL群が第2段階の電話面接対象となり、さらに第2段階で約20%がHFPDDと暫定診断された。つまり対象全体の1.6%がHFPDDと暫定的に診断された。HFPDD児と定型群とで、要求の指さし、興味の指さし、共同注意(モノを見せる)、言語理解の項目で、通過人数比が有意に異なり、また2群が最もよく判別された。他に常同行動、社会的参照、模倣の項目においても群の違いがみられた。
結論
臨床診断では見逃されるPDD早期兆候が、1歳6ヶ月の時点でM-CHATを用いた一連の早期発見システムにより捉えられた。PDD早期兆候の候補として、共同注意と指さしという前言語段階のコミュニケーション行動の重要性が明らかになり、さらに模倣の発達的意義が示唆された。この評価システムは発達早期の段階から親への心理教育的効果も伴い、児の発達を支援する有効な枠組みとなる可能性が示された。

公開日・更新日

公開日
2005-06-17
更新日
-