てんかん児童の社会自立をめざした包括的地域支援のための早期療育援助法の確立に関する研究

文献情報

文献番号
200400406A
報告書区分
総括
研究課題名
てんかん児童の社会自立をめざした包括的地域支援のための早期療育援助法の確立に関する研究
課題番号
-
研究年度
平成16(2004)年度
研究代表者(所属機関)
重松 秀夫(独立行政法人 国立病院機構静岡てんかん・神経医療センター)
研究分担者(所属機関)
  • 高橋 幸利(独立行政法人 国立病院機構静岡てんかん・神経医療センター)
  • 杉山 修(独立行政法人 国立病院機構静岡てんかん・神経医療センター)
  • 今井 雅由(独立行政法人 国立病院機構西甲府病院)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 子ども家庭総合研究
研究開始年度
平成16(2004)年度
研究終了予定年度
平成17(2005)年度
研究費
2,100,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
てんかん患者の社会的自立を阻害している要因を、発達臨床心理学的側面、社会福祉学的側面から分析を加え、てんかん患者の抱えている保育・教育上あるいは社会福祉的支援上の問題点を明らかにして、てんかん患者の福祉および社会的自立に向けての援助に寄与する。
研究方法
幼児期(1歳-6歳)に入院治療にて療育指導を実施し、17年以上経過した110症例について、てんかん治療経過、保育・教育状況、生活環境、療育・福祉的支援の有無、18歳を超えた時点での社会的自立について郵送によるアンケ-トによる実態調査を実施し、アンケートが回収できた46例(回収率41.8%)を対象としてその内容を検討した。
結果と考察
対象患者の年齢は平均21歳9ヵ月(18歳-26歳)。約7割が症候性全般てんかん、約2割が症候性部分てんかん。発作抑制率は54%で、症候性全般てんかんでは52%、症候性部分てんかんでは67%。就学前の通園施設利用は30.4%。小学生で63.0%、中学生で69.6%が特殊学級あるいは養護学校に通学していた。最終学歴は、養護学校高等部卒が約7割と最も多かった。対象群46例中16例が社会的自立(就労、進学中)していた。また症候性全般てんかんの30%、症候性部分てんかんの67%が社会自立できていた。発作抑制されている25例中14例(56%)は社会自立できていた。乳幼児期にDQ/IQが70以上であった者の方が社会自立状況は良かった。発作が抑制されていて知的水準が低くても、療育指導をしていた方が社会自立できる傾向があった。就学前から学齢期では、注意転導性などの問題行動が約半数に認められた。就学前の発達時期では半数以上の家族が発作や薬の副作用、保育園または学校生活での病気の理解不足などのてんかんに関連した悩みを持ち続けており、18歳を超えた現在でも約4割の家族が発作と家庭生活に関する悩みを持っていた。てんかんに関連した悩みを専門職や医師、友人などに相談できた家族は約6割以下であり、中学校では他に相談できずに家族だけで悩んでいる者が多く認められた。
結論
1.社会的自立には、てんかん発作の抑制と乳幼児期からの知的能力の維持が重要である。2.発達・行動面の問題をもつてんかん児童の場合には社会自立に向けて特別な療育(教育)支援が必要である。また、てんかん児童をもつ家族には就学前の発達時期から継続しててんかんに関連する悩みを相談できる専門の支援機関が必要である。3.てんかん児童が社会自立できるためには、てんかん発作、知的発達や行動問題及びてんかん家族を包括的に支援できる居住地域密着型の子育て支援システムの構築が必要である。

公開日・更新日

公開日
2005-06-16
更新日
-