文献情報
文献番号
200400387A
報告書区分
総括
研究課題名
児童福祉機関における思春期児童等に対する心理的アセスメントの導入に関する研究
研究課題名(英字)
-
課題番号
-
研究年度
平成16(2004)年度
研究代表者(所属機関)
西澤 哲(大阪大学大学院人間学研究科)
研究分担者(所属機関)
- 奥山眞紀子(国立成育医療センターこころの診療部)
- 福山清蔵(立教大学コミュニティ福祉学部)
- 犬塚峰子(東京都児童相談センター治療指導課)
- 阿部惠一郎(創価大学文学研究科)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 子ども家庭総合研究
研究開始年度
平成15(2003)年度
研究終了予定年度
平成17(2005)年度
研究費
10,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-
研究報告書(概要版)
研究目的
子ども虐待への対応は,今やわが国の子ども家庭福祉の中心的な課題となっている.しかし,子どもや保護者に対する心理的援助はほとんど行なわれていないという現状である.子どもや保護者に対して適切な心理的援助を行なうためには,子どもや保護者の心理的状態を的確に把握する必要があるが,こうしたアセスメントの方法は未確立である.こうした認識に基づき,本研究では虐待の問題に焦点を当てたアセスメントの技法の開発に向けた研究を行なった.
研究方法
本研究は,子どもに関する研究と保護者・家族に関する研究とに大別される.子どもに関しては,一時保護された子どもを対象に半構造化面接のプロトコルを作成し,その信頼性を検討した.また,「虐待体験尺度」(AEI-R),「乳幼児行動評価尺度」,「虐待を受けた子どもの行動チェックリスト」(ACBL-R)を児童福祉施設に入所中の子ども3,598人及び一般家庭の子ども2,071人を対象に実施し,信頼性・妥当性を検討及びカットオフ値の算出を試みた.家族・保護者に関しては,子どもが一時保護となった679家族に関する調査から「家族アセスメント尺度」の試案を作成し,また,精神科的な問題を持つ179人の保護者の記録分析を行なった.
結果と考察
19人の子どもを対象とした半構造化面接のデータ分析によってその信頼性が確認された.AEI-RとACBL-Rは臨床的な使用に耐えうる信頼性・妥当性を備えていることが示された.両尺度のカットオフ値の設定により,社会的・臨床的な介入が必要であると考えられる子どものスクリーニングが可能となった.また,従来実証的研究がほとんどなかった家族の客観的評価に資する尺度が提示できた.さらに,虐待傾向を示す保護者の精神医学的な問題として,うつ病及び人格障害の評価が重要であることがわかった.
結論
従来,虐待事例の援助方針や治療方針の設定においては援助者の主観に頼らざるを得なかったが,本研究で得られた方法(面接法及び評価尺度)を用いることで,客観的な基準による援助・治療方針の設定が可能となった.また,昨今,虐待事例への援助に関して家族支援の重要性が強調され,子どもと家族の再統合が援助目標とされるようになってきているが,本研究で作成した評価法を用いることで,こうした再統合の可能性を判断するための客観的な基準が得られると考えられる.
公開日・更新日
公開日
2005-06-28
更新日
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