母子関係障害についての精神医学的・発達心理学的研究-母子関係障害解決・予防のための基礎研究-

文献情報

文献番号
200400385A
報告書区分
総括
研究課題名
母子関係障害についての精神医学的・発達心理学的研究-母子関係障害解決・予防のための基礎研究-
課題番号
-
研究年度
平成16(2004)年度
研究代表者(所属機関)
本城 秀次(名古屋大学発達心理精神科学教育研究センター)
研究分担者(所属機関)
  • 氏家 達夫(名古屋大学発達心理精神科学教育研究センター)
  • 村瀬 聡美(名古屋大学発達心理精神科学教育研究センター)
  • 金子 一史(名古屋大学発達心理精神科学教育研究センター)
  • 板倉 敦夫(名古屋大学発達心理精神科学教育研究センター)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 子ども家庭総合研究
研究開始年度
平成15(2003)年度
研究終了予定年度
平成17(2005)年度
研究費
3,500,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
近年、乳幼児虐待や子どもを愛することができない母親の増加などが、注目を集めている。本研究の目的は、乳幼児虐待など母子の愛着障害の問題に対する予防的対応や早期の治療的介入の方策を検討することであった。
研究方法
研究対象は名古屋大学医学部附属病院産科で妊娠期からフォローしている親子である。初回の調査に参加している対象は500名を越えている。質問紙は、抑うつ尺度・愛着尺度・将来の出産、育児に関する不安、ソーシャルサポート、妊娠前の月経気分変調、夫婦関係などから構成されていた。
また、T市の母親1121名を対象に、妊娠・出産への態度、妊娠・周産期のリスク、夫・友人との関係、両親との関係、ストレス、育児行動、自身のパーソナリティー、子どもの特徴、抑うつなどからなる質問紙を実施した。
結果と考察
妊娠中期と出産後1カ月の時点で調査を行ったところ、妊娠中期に抑うつを疑われたのは15.7%、出産後1カ月で抑うつが疑われたのは13.8%であり、妊娠期においては出産後と変わらず抑うつの頻度は高かった。
 妊娠後期における妊婦の胎児に対する愛着では、母親の胎児に対する愛着の形成には妊婦の抑うつなどとともに、小さいころに自分の母親とどのような関係を持ったかが重要な要因となることが明らかとなった。さらに、父親、母親とも抑うつ傾向が高いと胎児への愛着は低く、抑うつ傾向の存在は胎児への愛着形成を阻害することが明らかとなった。
 出産後の親行動の問題の発生メカニズムについては、母親の体罰、拒否といった問題行動が発生する要因について検討を行い、ストレス、傷つきやすさ、子どもに対する腹立ち、関わり方が分からないといった要因がそれらの行動に関連していた。
結論
 妊娠期の母親の胎児に対する愛着の形成には抑うつが関連していることが示されたが、母親のみでなく、父親においても胎児に対する愛着が抑うつによって影響されていることが明らかになった。それゆえ、妊娠中から母親のみならず父親のメンタルヘルスに注意を払うことが、母親のメンタルヘルスにとって重要であることが示唆された。それとともに、早期からの親子関係のあり方が妊娠中からの胎児に対する愛着のありように影響することが明らかになった。

公開日・更新日

公開日
2005-06-15
更新日
-