児童虐待に対する治療的介入と児童相談所のあり方に関する研究

文献情報

文献番号
200400369A
報告書区分
総括
研究課題名
児童虐待に対する治療的介入と児童相談所のあり方に関する研究
課題番号
-
研究年度
平成16(2004)年度
研究代表者(所属機関)
本間 博彰(宮城県子ども総合センター)
研究分担者(所属機関)
  • 小野 善郎(和歌山県子ども・障害者相談センター)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 子ども家庭総合研究
研究開始年度
平成14(2002)年度
研究終了予定年度
平成16(2004)年度
研究費
4,100,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
児相による児童虐待対策の適切に行うために、第一には児相における虐待ケースに対する適切な介入と対応の進行管理のあり方と具体的な方法を検討し、併せて精神科診察や精神科治療を必要とする虐待ケースに対する入院治療を含めた「精神科医療による介入」のあり方の検討と、精神科医療機関との連携について検討した。
研究方法
児相の常勤精神科医、児童福祉司、心理判定員などから成る研究班を組織し、児相の進行管理システムの具体例、アンケート調査によって把握した全国の児相における進行管理の実態、研究協力者の経験などを材料にして研究討議を行った。児相と精神科医療との連携・協力に関する研究については、モデル的な実践を行っている児童相談所や地域の実地調査などを行い、児相での医師の業務や役割についてのあり方を検討した。
結果と考察
全国の児相が進行管理システムを構築・実行する上でのポイントや注意点をまとめた。進行管理システムは、児相における虐待対応の全体を管理するシステムであることから、個々のケースについての全体像と取るべき対応策を具体的な形に記載して、かつ他の職員が必要なときには何時でもケース記録と対応状況を閲覧できるようにしておくことの重要性を示した。
 現在の児相における精神科医療体制は十分に整備されておらず、常勤医の拡充、診療機能の整備などが早急になされる必要があるものの、全国の児相はその規模や地域の特性に大きな多様性が認められ、すべての児童相談所について一律的に精神科医療体制を求めることは合理的ではなく、それぞれの相談所の現状に最適な方法で医師の配置や医療機能の整備を行うことが重要であり、実状に合わせた方向性を示した。
結論
児童相談所のあり方については、児童福祉法で規定された本来の責務や課題を果たせなくなり、社会のニーズに十分に対応できない状態にあり、今回の児童福祉法一部改正法の主旨に合うように時代のニーズに対応できるようなグランドデザインが必要になってきた。
また、わが国の児童福祉制度と精神科医療との関連について国際的な視点も含めて検討し、その独自性として精神科医が児童福祉制度に組み込まれていることを示し、児童相談所が児童虐待へのより有効な介入・ケアを提供するだけでなく、地域の子どもの精神保健にも中心的な役割を示していく可能性が示唆された。

公開日・更新日

公開日
2005-06-16
更新日
-

文献情報

文献番号
200400369B
報告書区分
総合
研究課題名
児童虐待に対する治療的介入と児童相談所のあり方に関する研究
課題番号
-
研究年度
平成16(2004)年度
研究代表者(所属機関)
本間 博彰(宮城県子ども総合センター)
研究分担者(所属機関)
  • 小野善郎(和歌山県子ども・障害者相談センター)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 子ども家庭総合研究
研究開始年度
平成14(2002)年度
研究終了予定年度
平成16(2004)年度
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
児相の対応力の強化と虐待対応の中心的機関としての専門性の確保、および虐待者および被虐待児に対する精神的なケアの体制を整備するために、3年計画で「児相における包括的な虐待ケース進行管理のあり方の検討と進行管理の全国的な現状と問題点」および「児相における児童精神科診療の現状と医療業務について調査検討した。
研究方法
児童福祉司や心理判定員および精神科医師からなる研究班を構成し、アンケート調査や訪問調査、および米国オハイオ州コロンバス市の渡航調査を行った。
結果と考察
三年間の研究により、虐待対応の進行管理システムを実践する上での具体例や課題を示した。また児相および児童相談における児童精神科医療の必要性とその意義、そしてその体制作りのための方向性を示した。特に、児童虐待進行管理システムの具体的手法を数例提示し、あわせて実施上の問題点と課題についてまとめた。児相のあり方については、児童虐待が急激に増えたことにより児相はその対応に奔走され、児童福祉法で規定された本来の責務や課題を果たせなくなりつつあることや、社会のニーズに十分に対応できない状態が続いている現状が把握された。児相のあり方や持つべき役割などについて時代のニーズに対応できるように検討する必要性が示された。
結論
1.子どもの精神保健センター機能の整備
子どもの福祉の向上のための児相のあり方としては、子どもの精神保健は避けては通れない課題であり、現在のわが国の福祉・保健制度の中では、児相が地域における子どもの精神保健センターとしての機能を担っていくことが望まれる。特に中央児相がこうした機能を持つべく整備されることが望まれる。
2.児童福祉領域における児童精神科医療の展開
児相における精神科臨床は児童精神医学の中でもひとつの専門分野を構成する臨床であると考えることが合理的で、精神科医がこのような臨床を担当し医師としての責務を果たすためには、児相の臨床に対する専門性が求められることになる。児相に勤務する精神科医を確保するとともに、この児相特有の臨床を担い、児童相談業務の中での役割を果たし得る医師の専門性の確保も重要な課題となる。そのためには、わが国の医師養成制度や精神科医の研修体制の問題として大学医学部や研修機関に期待するだけでなく、児相としても専門医の養成に真剣に取り組んでいく必要がある。

公開日・更新日

公開日
2005-06-16
更新日
-