日本人女性の葉酸代謝関連酵素遺伝子多型と先天異常(神経管欠損症およびダウン症候群等)の発生予防効果に関する基礎的研究

文献情報

文献番号
200400362A
報告書区分
総括
研究課題名
日本人女性の葉酸代謝関連酵素遺伝子多型と先天異常(神経管欠損症およびダウン症候群等)の発生予防効果に関する基礎的研究
課題番号
-
研究年度
平成16(2004)年度
研究代表者(所属機関)
鈴森 薫(名古屋市立大学大学院医学研究科 生殖・遺伝医学講座 生殖・発生医学分野)
研究分担者(所属機関)
  • 羽田 明(千葉大学大学院医学研究科 公衆衛生学)
  • 孫田 信一(愛知県心身障害者コロニー発達障害研究所 遺伝部)
  • 大橋 博文(埼玉県立小児医療センター 内科)
  • 種村 光代(名古屋市立大学大学院医学研究科 生殖・遺伝医学講座 生殖・発生医学分野)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 子ども家庭総合研究
研究開始年度
平成14(2002)年度
研究終了予定年度
平成16(2004)年度
研究費
5,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
神経管欠損症、ダウン症候群、その他の先天異常児(流・死産児を含む)を分娩した日本人女性の血清葉酸値、あるいは葉酸代謝関連酵素群遺伝子多型を一般女性の対照群と比較検討することにより、日本人女性において葉酸がこれらの先天異常の発症の一次予防薬となる可能性があるかを検討する。平成16 年度は流産に焦点をあてて検討する。
研究方法
本研究は「ヒトゲノム・遺伝子解析研究に関する指針」を遵守し、人類遺伝学会をはじめとする日本医学会分科会、関連組織の倫理規定の元に実施される。研究計画、インフォームドコンセント書式については所属施設の倫理委員会の承認を得た書式を用いる。<解析方法>1.神経管閉鎖障害の症例の葉酸代謝関連遺伝子の多型解析や追跡調査を継続した。2.原因不明流産の母体、絨毛や胎児由来細胞などの検体採取を行い、染色体異常を持つ流産胎児20例、染色体異常を検出できなかった流産胎児20例の、双方の母親における遺伝子多型の関連について検討した。解析したのはMethylenetetrahydrofolate reductase (MTHFR)のC677TおよびA1298C多型、Methionine synthase reductaseのA66G多型、Thymidylate synthaseのプロモーター領域にある28bpのリピート回数の多型、Methionine synthase遺伝子のA2756G多型(D→G)である。
結果と考察
神経管欠損症については17家系の12名の母親からの同意を得て葉酸代謝関連遺伝子の多型解析を開始したが、有意な結果は得られていない。多くの母親が予防的葉酸内服を開始し、これまでに出生した児は全例正常であった。染色体異常をもつ流産胎児の母親を対照の母親と比較したところ、MTHFRの677Tアレルの頻度が有意に高い事が分かった (P=0.0096)。677Tアレルはホモシステインの高値とも関連しているため、染色体異常発生に関与している可能性がある。
結論
染色体異常をもった自然流産胎児の母親において、MTHFR遺伝子多型の有意差が観察できたことは興味深い。日本人においても慢性的な葉酸欠乏が染色体異常の一要因となっている可能性を示唆するものである。神経管欠損症のみならず、流産予防の見地からも有用性があることをふまえ、葉酸摂取啓蒙活動を推進する必要がある。

公開日・更新日

公開日
2005-06-16
更新日
-

文献情報

文献番号
200400362B
報告書区分
総合
研究課題名
日本人女性の葉酸代謝関連酵素遺伝子多型と先天異常(神経管欠損症およびダウン症候群等)の発生予防効果に関する基礎的研究
課題番号
-
研究年度
平成16(2004)年度
研究代表者(所属機関)
鈴森 薫(名古屋市立大学大学院医学研究科 生殖・遺伝医学講座 生殖・発生医学分野)
研究分担者(所属機関)
  • 羽田 明(千葉大学大学院医学研究院 公衆衛生学)
  • 孫田 信一(愛知県心身障害者コロニー発達障害研究所 遺伝部)
  • 大橋 博文(埼玉県立小児医療センター 内科)
  • 種村 光代(名古屋市立大学大学院医学研究科 生殖・遺伝医学講座 生殖・発生医学分野)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 子ども家庭総合研究
研究開始年度
平成14(2002)年度
研究終了予定年度
平成16(2004)年度
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
神経管欠損症、ダウン症候群、その他の先天異常児(流・死産児を含む)を分娩した日本人女性の血清葉酸値、あるいは葉酸代謝関連酵素群遺伝子多型を対照群と比較検討することにより、日本人女性において葉酸がこれらの先天異常の発症の一次予防薬となる可能性があるかを検討する。
研究方法
本研究は「ヒトゲノム指針」を遵守し、関連する学会や組織の倫理規定の元に実施される。<対象>1神経管欠損症、2ダウン症候群出産症例、3原因不明流産症例から検体を採取する。<解析方法>絨毛細胞や両親の末梢血細胞を集積し、まずは染色体解析を行った。次に、Methylenetetrhydrofolate reductase (MTHFR)のC677TおよびA1298C多型、Methionine synthase reductase (MTRR)のA66G多型、Thymidylate synthase (TS)のプロモーター領域にある28bpのリピート回数の多型、Methionine synthase (MTR)遺伝子のA2756G多型(D→G)について解析した。
結果と考察
神経管欠損症17家系のうち12名の母親の遺伝子多型解析を施行したが、有意な差は検出できなかった。予防的に葉酸を内服して既に分娩に至った6症例から再発は認めなかった。ダウン症の母親の解析では、MTHFRとTSの遺伝子多型頻度に有意差はなかったが、MTRRでは症例群ではGG遺伝子型の頻度が有意に低かった。CaucasianではGG遺伝子型が有意に高頻度であると報告されており、逆の結果であった。MTRではGアレルの頻度は症例で22%、コントロールで15%であり、遺伝子型DDとDG+GGを比較したところ、DG+GGが症例群で多い傾向にあったが、有意とはならなかった。染色体異常を持つ流産胎児の母親では、MTHFRの677Tアレルの頻度が有意に高い事がわかった。677Tアレルはホモシステインの高値とも関連している為、染色体異常発生に関与している可能性がある。
結論
神経管欠損症の症例では遺伝子多型の有意差は確認できなかったが、研究期間内に次子の分娩に至った予防的葉酸投与群の症例からは再発は認めなかったことは評価できる。染色体異常をもった流産胎児の母親において、MTHFR遺伝子多型の有意差が観察できたことは新規の知見である。日本人においても慢性的な葉酸欠乏が染色体異常の一要因となっている可能性を示唆する。流産予防の見地からも葉酸の有用性があることをふまえ、葉酸摂取啓蒙活動を推進する必要がある。

公開日・更新日

公開日
2005-06-16
更新日
-