痴呆のスクリーニング及び早期診断法の確立に関する臨床研究

文献情報

文献番号
200401340A
報告書区分
総括
研究課題名
痴呆のスクリーニング及び早期診断法の確立に関する臨床研究
課題番号
-
研究年度
平成16(2004)年度
研究代表者(所属機関)
武田 雅俊(大阪大学大学院・医学系研究科ポストゲノム疾患解析学講座プロセシング異常疾患分野(精神医学))
研究分担者(所属機関)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 痴呆・骨折臨床研究【若手医師・協力者活用に要する研究】
研究開始年度
平成16(2004)年度
研究終了予定年度
平成17(2005)年度
研究費
35,859,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
従来、アルツハイマー病(AD)の診断は臨床症状と画像所見などを総合して行われるが、一般的に確定診断には至らない。近年ADの病態生理の解明が進み、様々な治療法の可能性が検討されており、いっそうADのEBMの確立が期待されるようになりつつある。その中で、ADに特異的な生物学的マーカーはEBMへのアプローチとして期待されるが、現在までのところ発展途上であると言わざるを得ない。そこで、本プロジェクトはADのEBMにつながる生物学的マーカーの検討をするため、チームを結成して大規模臨床研究に取り組むことで、行うものである。
研究方法
酸化ストレスを反映するマーカーの検討として、脳脊髄液中の酸化タウをウエスタン法により定量し、尿中の8-hydroxydeoxyguanosine(8-OHdG)及び血清CoQ10の酸化物をELISAにて定量した。また、リスク遺伝子から得られるマーカーの検討として、メチレンテトラヒドロ葉酸還元酵素(MTHFR)C677Tアレル及びアポリポ蛋白A-Ⅱマイクロサテライト(TG)量を分子遺伝学的に検討した。
結果と考察
1.酸化ストレスを反映するマーカーの妥当性の検討
①脳脊髄液中の酸化(カルボニル化)タウの定量
AD患者(15名)、正常者(8名)、MCI(2名)の脳脊髄液中のカルボニル化タウを定量したところ、AD患者群は他群より高値を示す結果が得られた。
②尿中8-OHdG及び血清CoQ10酸化率の計測
尿中及び血清中で、AD患者(14名、12名)で2つの酸化の指標となる分子のレベルは、健常対照群(39名、4名)に比べて上昇していることが明らかになった。
2.リスク遺伝子検索から得られるマーカーの妥当性の検討
①MTHFRC677Tアレルの検討
APOE-e4を持たない高齢発症型アルツハイマー病(LOAD)(92名)では、MTHFR C677Tアレル頻度は正常者(319名)に対して有意に高いことが示された。
②アポリポ蛋白A-Ⅱマイクロサテライト(TG)量の検討
APOE-e4陽性のLOAD(234名)では、APOA-ⅡマイクロサテライトTGの量は発症年齢と逆相関することが示された。
結論
ADのEBMにつながる生物学的マーカーとして、酸化ストレスを反映するマーカー及びリスク遺伝子に基づく検索は有用であり、大規模臨床研究に値すると結論される。

公開日・更新日

公開日
2005-11-11
更新日
-

研究報告書(紙媒体)