再生医療的手法による、脳血管性痴呆症および虚血性脳血管障害に対する早期診断および予防法の確立に関する研究

文献情報

文献番号
200401336A
報告書区分
総括
研究課題名
再生医療的手法による、脳血管性痴呆症および虚血性脳血管障害に対する早期診断および予防法の確立に関する研究
課題番号
-
研究年度
平成16(2004)年度
研究代表者(所属機関)
田口 明彦(国立循環器病センター研究所循環動態機能部)
研究分担者(所属機関)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 痴呆・骨折臨床研究【若手医師・協力者活用に要する研究】
研究開始年度
平成16(2004)年度
研究終了予定年度
平成17(2005)年度
研究費
19,500,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
末梢血中の血管血球系幹細胞が同定されて以降、この幹細胞が心筋組織などの血管の維持や修復に非常に重要な役割を果たしている事が明らかにされてきた。これらの知見をもとに近年、従来の治療法では対処できなかった難治性の虚血性心疾患等に対して、再生医療学的手法を用いた治療法の臨床応用が開始され、十分な治療的効果が示されている。本臨床研究実施チームでは、脳障害と血管血球系幹細胞との関連を明らかにするとともに、新しい治療法として確立するための検討を行う。
研究方法
各施設における倫理委員会の承認後、脳血管障害患者および痴呆患者における末梢血中CD34陽性細胞数等の測定を行い、①末梢血中血管血球系幹細胞と脳梗塞の病態の関連に関する断面研究、および②末梢血中血管血球系幹細胞と患者予後との関連の解明を目的とした前向き経時的コホート研究、を実施している。また、本研究で得られた知見をもとに、CD34陽性細胞や自己骨髄単核球投与による機能回復療法や発症予防法への発展を目指している。
結果と考察
末梢血中のCD34陽性細胞やCD133陽性細胞などの血管血球系幹細胞の減少が、脳梗塞の発症と関連していること、および血管血球系幹細胞の減少が単に血流低下に関与しているだけではなく、血管内皮細胞の機能の低下とも関連していることを示した。これらの結果は、末梢血中の血管血球系幹細胞が脳血管のメンテナンスに関与しているだけでなく、神経組織の代謝や機能にまで影響を与え、高次神経機能の低下や痴呆症の発症とも関連している可能性を示唆している。また、動脈硬化の危険因子との関連の検討においては、糖尿病患者群で著明な末梢血中血管血球系幹細胞数の減少が観察されており、これらは糖尿病性合併症である微小循環障害の発症と関連している可能性が高いと考えている。これらの成果を基に新しい治療法の確立に向けたプロトコル作りを行っている。
結論
我々は末梢動脈閉塞症患者に自己骨髄由来の血管血球系幹細胞を移植することにより虚血症状が改善すること、および、脳虚血動物モデルにおいても、血管血球系幹細胞の移植が神経症状の改善をもたらすことを明らかにしてきた。これらの知見は、脳梗塞患者に対する血管血球系幹細胞移植治療の可能性を示唆するものであり、本研究で得られた知見と総合し発展させることにより、脳梗塞患者に対する新しい治療法を確立することができると考えている。

公開日・更新日

公開日
2005-03-28
更新日
-