高齢者の脊柱変形と躯幹短縮による生活機能低下の実態の解明と予防法の開発

文献情報

文献番号
200400355A
報告書区分
総括
研究課題名
高齢者の脊柱変形と躯幹短縮による生活機能低下の実態の解明と予防法の開発
課題番号
-
研究年度
平成16(2004)年度
研究代表者(所属機関)
中村 利孝(産業医科大学医学部)
研究分担者(所属機関)
  • 吉田 英世(東京都老人総合研究所)
  • 細井 孝之(東京都老人医療センター)
  • 藤原 佐枝子(放射線影響研究所)
  • 吉村 典子(東京大学大学院医学系研究科)
  • 白木 正孝(成人病診療研究所)
  • 井上 聡(東京大学大学院医学系研究科)
  • 青柳 潔(長崎大学大学院医歯薬学総合研究科)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 痴呆・骨折臨床研究
研究開始年度
平成16(2004)年度
研究終了予定年度
平成17(2005)年度
研究費
12,740,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
本研究は高齢者の脊柱変形と躯幹短縮による生活機能低下の実態を明らかにし、高齢者の生活の質を改善させることが目的である。
研究方法
1)40歳以上男女 299人の縦断研究で身体測定、骨密度、X線調査を行い、性別、年代別に新規椎体骨折発生と身長変化の関連を調べた。2)男女1941人(平均年齢71.5歳)に対する横断研究で、最も身長の高かった時と比較した身長変化、X線での脊椎骨折の有無および健康関連QOLを調べた。3)40歳以上の女性372名の縦断研究で脊椎X線所見と日常生活動作制限の関連を調べた。4)65歳以上の女性215名の縦断研究で、身体測定、脊椎X線、転倒のリスク評価を行った。5)閉経後女性1162名の縦断研究で観察開始時の脊柱変性と骨折との関連および新規骨折の発生と脊柱変性・変形の推移の関連を検討した。6)骨形成で重要な役割を担う候補遺伝子における遺伝子多型と脊椎変形との関連を調べた。
結果と考察
1)新規脊椎椎体骨折の性、年齢別の累積発生率は男女とも増加し、身長低下は脊椎椎体骨折の発生と有意な関連を示した。2)身長低下と骨密度低下、脊椎骨折は強い関連があり、2cm以上の身長低下は健康関連QOLの低下と関連した。3)新規椎体骨折発生は年齢が高くなるに従って有意に増加し、新規椎体骨折数が多いほど有意に腰痛・背部痛の悪化と関連した。4)低身長および前傾姿勢は、将来的な転倒の発生のリスクを高めた。5)横断的調査では既存骨折・新規骨折発生と骨棘の数およびその程度が関連し、縦断的調査では既存骨折・新規骨折発生は骨棘の程度を進行させた。6) Wnt-β-cateninシグナル伝達に関連する2つの遺伝子(LRP5およびsFRP4)の遺伝子多型が骨量および椎間板狭小化に関与した。γ-glutamyl carboxylase (GGCX)遺伝子多型はvitamin Kによる治療効果に影響することが示唆された。
結論
①身長低下は骨密度低下および脊椎骨折と有意な関連があり、身長低下および多椎体骨折は腰痛や運動能力低下を招いてQOLを悪化させ、低身長および前傾姿勢により転倒の危険性が高まることが明らかとなった。②脊柱変性は、加齢に伴い直線的に頻度が高くなった。③GGCX、LRP5およびsFRP4などの遺伝子多型が骨粗鬆症や変形性脊椎症の発症に関与している可能性が示唆された。

公開日・更新日

公開日
2005-04-11
更新日
-