骨粗鬆症に伴う大腿骨頸部骨折の効果的かつ効率的予防に関する臨床的研究

文献情報

文献番号
200400348A
報告書区分
総括
研究課題名
骨粗鬆症に伴う大腿骨頸部骨折の効果的かつ効率的予防に関する臨床的研究
課題番号
-
研究年度
平成16(2004)年度
研究代表者(所属機関)
高岡 邦夫(大阪市立大学大学院医学研究科整形外科学)
研究分担者(所属機関)
  • 藤原 佐枝子(放射線影響研究所臨床研究部)
  • 白木 正孝(成人病診療研究所)
  • 橋本 淳(大阪大学大学院医学研究科器官制御外科学)
  • 小林 千益(信州大学医学部整形外科)
  • 小池 達也(大阪市立大学大学院医学研究科リウマチ外科学)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 痴呆・骨折臨床研究
研究開始年度
平成16(2004)年度
研究終了予定年度
平成17(2005)年度
研究費
13,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
2003年4月に介護保険制度の見直しが行われた。在宅重視と自立支援の観点から、要介護状態になることを予防し、施設に入所した場合でも、在宅生活に近い形で生活し、将来的には、出来る限り在宅に復帰できるように、所要の見直しが行われた。しかし、これらの流れに大きく立ちはだかるのが、「大腿骨頸部骨折」である。骨折が発生すると、疼痛や日常動作の制限を生じ、患者の機能やQOLが著しく侵される。そこで、本研究の目的は、転倒から骨折に至るすべてのステップを詳細に検討し、大腿骨頸部骨折の発生を予防することにある。特に、施設入所者の骨折予防は急務であり、具体的対策としてヒッププロテクターの効果を早急に明らかにする。
研究方法
我が国では縦断分析による転倒と大腿骨頸部骨折の研究は皆無である。そこで、広島コホートで、2000人の住民の検診結果から転倒骨折危険因子の抽出を行い、骨折予備群の特徴を明らかにする。長野コホートからは3000人の住民の検診結果から転倒骨折危険因子の抽出を行い、骨折予備群の特徴を明らかにする。さらに、東京・長野・愛知・京都・岡山・香川・大阪の高齢者施設の協力を得て、700名を目標にヒッププロテクターの無作為化試験を行う。
結果と考察
広島コホートからは、骨密度を考慮しない場合には、体重は大腿骨頸部骨折の予測因子となったが、骨密度を考慮に入れると、骨折との関係は見られなかくなり、骨密度のみ骨折を予測したという結果が得られた。長野コホートの結果では、骨折の発生には低骨密度(骨粗鬆症)、高代謝回転、ビタミンD不足、コラーゲン代謝の異常および脊椎変性の違いがそれぞれの骨折に関与していた。ヒッププロテクター試験では、2005年1月時点で約600名の施設入所高齢女性を対象として、無作為化前向き試験を行い、プロテクターにより60%以上の骨折予防効果が存在することが判明した。
結論
ヒッププロテクターの結果は中間報告ではあるが、600名以上の大規模試験で、ヒッププロテクターが60%以上の大腿骨頸部骨折抑制効果を示すことが明らかとなった。世界に十分通用する研究だと確信している。さらに詳細な検討を加え、プロテクターそのものの改良も含め、ヒッププロテクター研究を完成させたい。広島・長野のコホート研究からは今年も斬新な結果が得られた。これら結果から、骨折予備軍を抽出し、薬物療法やヒッププロテクターを適応すれば、少ない資源で最大限の効果を得ることが出来ると考えられる。

公開日・更新日

公開日
2005-04-11
更新日
-