文献情報
文献番号
200400344A
報告書区分
総括
研究課題名
アルツハイマー病の早期診断、治療戦略の開発
課題番号
-
研究年度
平成16(2004)年度
研究代表者(所属機関)
石神 昭人(東京都高齢者研究・福祉振興財団 東京都老人総合研究所加齢臓器障研究グループ)
研究分担者(所属機関)
- 半田 節子(東京都高齢者研究・福祉振興財団 東京都老人総合研究所加齢臓器障研究グループ)
- 久保 幸穂(東京都高齢者研究・福祉振興財団 東京都老人総合研究所加齢臓器障研究グループ)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 痴呆・骨折臨床研究
研究開始年度
平成16(2004)年度
研究終了予定年度
平成17(2005)年度
研究費
6,500,000円
研究者交替、所属機関変更
-
研究報告書(概要版)
研究目的
アルツハイマー病(AD)での特徴的な病理所見としてアミロイドベータ蛋白質(Aβ)が蓄積した老人斑や、リン酸化タウ蛋白質が蓄積した神経原繊維変化は有名である。これら蛋白質は、本来、正常な機能を果たしていたものがやがて様々な修飾を受け異常化し、神経細胞の内側や外側に蓄積したためと考えられる。我々は、AD患者の脳で蛋白質中のアルギニンという塩基性アミノ酸がシトルリンという中性アミノ酸に変換された異常な蛋白質(シトルリン化蛋白質)が多く出現することを見出した。本研究では、シトルリン化蛋白質の生成がAD発症の引き金になることを証明する。また、シトルリン化蛋白質を指標としたAD早期診断を行う臨床検査試薬を開発する。
研究方法
シトルリン化蛋白質がAD発症の引き金となることを証明する。即ち、①AD患者脳におけるシトルリン化蛋白質の生成を免疫学的、生化学的手法を用いて解析する。②プロテオーム解析によりAD脳におけるシトルリン化蛋白質分子を同定する。③シトルリン化蛋白質の高感度ELISAシステムを構築し、AD早期診断を行う臨床検査試薬を開発する。
結果と考察
AD患者の脳では、シトルリン化蛋白質が多く出現し、病状の進行程度に応じてその量が増加することがわかった。また、Aβ陽性の老人斑やリン酸化タウ陽性の神経原繊維変化とシトルリン化蛋白質陽性の染色部位が良く一致した。一方、正常脳では、シトルリン化蛋白質は、ほとんど検出されなかった。プロテオーム解析により、AD患者の脳では、グリア線維性酸性蛋白質(GFAP)、ミエリン塩基性蛋白質(MBP)、ビメンチンがシトルリン化されていることを同定した。これらの結果は、AD患者の脳では、PADの異常な活性化が起こっており、その結果としてシトルリン化蛋白質が生成、蓄積していることを強く示唆している。
結論
アルツハイマー病患者の脳では、シトルリン化蛋白質が多く出現し、病状の進行程度に応じてその量が増加することを明らかにした。アルツハイマー病発症におけるシトルリン化蛋白質の関与は明白である。
公開日・更新日
公開日
2005-04-11
更新日
-