老人精神疾患患者の経過に及ぼす家族の感情表出の影響

文献情報

文献番号
200400331A
報告書区分
総括
研究課題名
老人精神疾患患者の経過に及ぼす家族の感情表出の影響
課題番号
-
研究年度
平成16(2004)年度
研究代表者(所属機関)
三野 善央(大阪府立大学 社会福祉学部)
研究分担者(所属機関)
  • 井上新平(高知大学 医学部)
  • 下寺信次(高知大学 医学部)
  • 津田敏秀(岡山大学大学院 医歯学総合研究科)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 長寿科学総合研究
研究開始年度
平成14(2002)年度
研究終了予定年度
平成16(2004)年度
研究費
4,463,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
老人精神疾患患者に及ぼす家族の感情表出(expressed emotion EE)の影響を明らかにすることを研究目的とした.以下分担研究ごとに分けて記すと,①統合失調症者とともに生活する高齢家族へ援助のためのケアマネジメントのあり方を検討すること,②うつ病家族心理教育の効果を臨床疫学的に検討すること,③痴呆性疾患への家族のEEの影響を評価すること,④老人精神疾患と家族に関する疫学研究方法論を検討することである.
研究方法
①英国イングランドのケアマネジメントの歴史と現状を分析した.その中で統合失調症者の家族へのケアマネジメントの内容,高齢家族への援助の内容を検討した.②大うつ病または双極性感情障害を対象疾患とした。FMSSによる高EEと低EE群は無作為に家族教育を行う介入群と行わないコントロール群に分けた。教材としてうつ病の疾患教育用ビデオ、パンフレットを使用した。③対象者は認知症患者とその家族20例,および英国の認知症,統合失調症の家族それぞれ20名とした.家族のEEはCamberwell Family Interview(CFI)によった。④科学哲学の基礎知識と疫学的因果モデルに基づき、疫学理論の検討を行った.
結果と考察
①英国におけるケアマネジメントにおいては,家族への援助が明確に規定されており,その内容はわが国で必要不可欠とされた心理教育の内容と合致していた.また,細かな援助内容を明らかにできた.②気分障害の再発率は高EE群が有意に高かった。高EE群の患者の医療費は低EE群と比較して、約1.6倍の医療費が必要であった。③統合失調症の基準による高EEはわずかに5%であり、高EOIを示した1人だけであった。これは他の3群の対象者のいずれよりも低い値であった。わが国の家族の感情表出は英国よりも低かった.④疫学理論に関しては、有向非巡回グラフに基づいた交絡要因候補の整理と因果モデルの整理の問題に関して例を用いて説明した。
結論
家族のEEは老人精神疾患患者においても重要な役割を果たすだろうことが明らかとなった.しかし,疾病によって影響の大きさは異なり,家族心理教育を行う場合には疾病特異性を考慮しなければならない.また高齢者のための心理教育ツールが必要である。

公開日・更新日

公開日
2005-05-17
更新日
-

文献情報

文献番号
200400331B
報告書区分
総合
研究課題名
老人精神疾患患者の経過に及ぼす家族の感情表出の影響
課題番号
-
研究年度
平成16(2004)年度
研究代表者(所属機関)
三野 善央(大阪府立大学 社会福祉学部)
研究分担者(所属機関)
  • 井上新平(高知大学 医学部 )
  • 下寺信次(高知大学 医学部)
  • 津田敏秀(岡山大学医歯学総合研究科)
  • 黒田研二(大阪府立大学 社会福祉学部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 長寿科学総合研究
研究開始年度
平成14(2002)年度
研究終了予定年度
平成16(2004)年度
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
老人精神疾患患者に及ぼす家族の感情表出(EE)の影響を明らかにすることを研究目的とした。以下分担研究ごとに、①統合失調症者と生活する老人介護者の特徴を明らかにし、心理教育のテキストを開発すること、②老人気分障害者へのEEの影響を明らかにすること、また心理教育用テキストとビデオを開発し、心理教育の効果を評価すること、③認知症家族のEEの特徴を明らかにし、それを日英で比較すること、④老人精神疾患と家族に関する疫学研究方法論を検討することである。
研究方法
①127名の統合失調症患者を対象にEEと年齢の関連を検討した。また介護者が老人の場合の心理教育用テキストを開発した。さらにケア・マネジメントを行う場合の高齢者への取り組みのあり方を検討した。
 ②高齢気分障害者に家族のEEが及ぼす影響を検討するためのコホート研究を行った。さらにうつ病家族心理教育のためのテキストとビデオを開発,その効果を無作為化対照試験によって検討した。③認知症については、精神症状・問題行動の評価などを行った。家族のEEの評価を行い、その特徴を英国の認知症、統合失調症、わが国の統合失調症と比較検討した。④高齢精神疾患と家族との関連を研究するための疫学的問題点を検討した。
結果と考察
①統合失調症では、高齢者と非高齢者の間でEEの差は認められなかった。家族心理教育のためのテキストを出版した。さらに高齢家族へのケア・マネジメントのあり方を検討した。②気分障害に関しては、高齢者では非高齢者と比較して、批判的コメントが多かった。家族心理教育用のテキストとビデオを開発し,再発予防効果をRCTによって評価したところ、再発予防効果があった。③認知症については、ADLと精神症状・行動障害との間の関連が見られた。家族のEEを比較すると、批判は多い順に、英国統合失調症、英国認知症、わが国の統合失調症、わが国の認知症であった。④疫学理論のさらなる精緻化を行った.
結論
老人精神疾患患者と家族のEEに関する研究を行った結果、家族あるいは本人のEEは老人精神疾患患者においても重要な役割を果たすだろうことが明らかとなった。家族心理教育はこれらの老人精神疾患患者の予後を改善する可能性が大きく、その具体的内容の確立と臨床疫学的効果判定がさらに必要である。

公開日・更新日

公開日
2005-05-17
更新日
-