摂食・嚥下障害患者の「食べる」機能に関する評価と対応

文献情報

文献番号
200400325A
報告書区分
総括
研究課題名
摂食・嚥下障害患者の「食べる」機能に関する評価と対応
課題番号
-
研究年度
平成16(2004)年度
研究代表者(所属機関)
才藤 栄一(藤田保健衛生大学 医学部リハビリテーション医学講座)
研究分担者(所属機関)
  • 馬場 尊(藤田保健衛生大学 医学部リハビリテーション医学講座)
  • 鈴木 美保(藤田保健衛生大学 医学部リハビリテーション医学講座)
  • 米田 千賀子(藤田保健衛生大学 医学部リハビリテーション医学講座)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 長寿科学総合研究
研究開始年度
平成14(2002)年度
研究終了予定年度
平成16(2004)年度
研究費
3,131,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
摂食・嚥下障害患者における「咀嚼を有する嚥下」への標準的対処法の体系化を目的に3年度計画で以下の検討を行った。 A) 嚥下反射に及ぼす咀嚼の影響の定量的解明、 B) 咀嚼負荷嚥下評価法の開発、 C) 安全な咀嚼訓練方法の開発、 D) 中咽頭での安全な食塊形成が可能な食品特性の同定。H16年度は上記の C) とD) について検討し、さらに全研究を総括し評価・対応体系を提案した。
研究方法
C) 安全な咀嚼訓練方法の開発については、C1) 声門閉鎖機能強化法の差異、C2) 内視鏡バイオフィードバック、C3) 頭頚部肢位と口腔咽頭構造・嚥下動態の関係を検討を行った。
D) 中咽頭での安全な食塊形成が可能な食品特性の同定については、D1) 口腔保持と食塊性状が咽頭進行に与える影響、D2) 食塊の性状が中咽頭停留に及ぼす影響、D3) 食塊の性状と体位の相互作用の検討を行った。
結果と考察
C) 健常例、咽頭麻酔例、嚥下障害例における検討から咀嚼嚥下の際にSupraglottic Swallow (SGS) の気道防御の有効性が示された。SGSの指導には内視鏡バイオフィードバックが有用であった。体位はChin downとして頭部屈曲位と頚部屈曲位を使い分ける必要性が理解できた。安定した頭部肢位の確保には上顎位置を指定する指導法が有効であった。リクライニング位は深い嚥下反射前咽頭進行を伴い適切ではなかった。
D) ゼラチンゼリーは、口腔保持課題で深い嚥下反射前咽頭進行を伴い適切ではなかった。体温で溶けず離水の少ないゼリーが有用であった。咀嚼嚥下で安全な食品の特性としては、咀嚼に伴い効率よく区分化されかつ水溶化せず中咽頭に留まる物性を有するものと結論できた。
結論
咀嚼嚥下の訓練としては、SGSが適切と思われた。また、下咽頭へ食塊進行予防のため咀嚼効率を増す手段が必要と考えられた。肢位ではChin downと呼ばれる肢位の内、頭部屈曲が適切であった。リクライニング位は不適切といえた。
咀嚼嚥下には、ゼラチンゼリーは、水溶化し口蓋舌シールの密封性を阻害すると考えられ不適切であり、温度で物性変化の少ないゼリーが好ましかった。
3年度の研究で、咀嚼嚥下に対する臨床対応法の基礎が確立できたと考えられた。

公開日・更新日

公開日
2005-04-11
更新日
-

文献情報

文献番号
200400325B
報告書区分
総合
研究課題名
摂食・嚥下障害患者の「食べる」機能に関する評価と対応
課題番号
-
研究年度
平成16(2004)年度
研究代表者(所属機関)
才藤 栄一(藤田保健衛生大学 医学部リハビリテーション医学講座)
研究分担者(所属機関)
  • 馬場 尊(藤田保健衛生大学 医学部リハビリテーション医学講座)
  • 鈴木 美保(藤田保健衛生大学 医学部リハビリテーション医学講座)
  • 米田 千賀子(藤田保健衛生大学 医学部リハビリテーション医学講座)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 長寿科学総合研究
研究開始年度
平成14(2002)年度
研究終了予定年度
平成16(2004)年度
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
咀嚼・嚥下連関の生理学的・運動学的解明と臨床応用を目的とし、さらに摂食・嚥下障害患者における「咀嚼を有する嚥下」への対処法の体系化を目指した。
研究方法
A) 咀嚼の影響の定量的解明では、1)食塊の嚥下反射前咽頭進行の病態や加齢による変化、2)嚥下反射前咽頭進行は咀嚼の嚥下抑制によるという仮説を支持できるか、3)Stage II transportの個人差の要因は何か、の3点を検討した。B) 評価法の開発では、1)咀嚼負荷法の開発と 2)内視鏡評価の確立を目指した。C) 訓練法の開発では、1)喉頭閉鎖増強法の比較、 2)咀嚼法の検討、3)体位効果の検討を行った。D) 中咽頭での安全な食塊形成が可能な食品特性の検討では、咀嚼嚥下におけるゼリー物性の影響を検討した。
結果と考察
A)嚥下障害者では嚥下前咽頭進行が深く誤嚥を伴いやすかった。高齢者で命令嚥下、固形物の咀嚼嚥下の嚥下反射前深達度が深かったが、各様式間の相関は低かった。咀嚼が下咽頭滴下の嚥下誘発性に影響しなかったことなどから咀嚼は嚥下を抑制しないと考えられた。喉頭蓋の形態として筒型例は高齢者で多く深達度が深かった。B)咀嚼負荷嚥下法の被検食物は、高難易度の負荷として混合物、嚥下前咽頭進行を検討する負荷としてクッキーが適当と考えられた。内視鏡は少量の食塊進行を同定可能であり、誤嚥検出性も高かった。C)咀嚼嚥下時のSupraglottic Swallowは気道防御に有効だった。 下咽頭へ食塊進行予防のため咀嚼効率を増す手段が必要と考えられた。Chin downを細分類し頭部屈曲が適切なことを明らかにした。リクライニング位は下咽頭進行が増え推奨できなかった。D) ゼラチンゼリーは口腔保持における咽頭進行が早かった。ゼリーでは体温でも水溶化しない設計が必要であった。
結論
嚥下障害患者や高齢者において嚥下反射前咽頭進行は深くなり、それに伴って誤嚥の危険が高まった。下咽頭滴下実験で咀嚼が嚥下を抑制するという証拠はなかった。咀嚼嚥下負荷の被検物は、混合物とクッキーの2つが適当といえた。内視鏡評価では少量の食塊進行の同定が可能であった。訓練としてはSupraglottic Swallowが適切と思われた。また咀嚼効率を増す手段が必要と考えられた。Chin downの内、頭部屈曲が適切であった。リクライニング位は不適切だった。ゼラチンゼリーは、水溶化しpalato-lingual sealの密封性を阻害し不適切であった。以上、咀嚼嚥下に対する臨床対応法の基礎が確立できたと思われた。

公開日・更新日

公開日
2005-04-11
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

公開日・更新日

公開日
2006-02-20
更新日
-