老化に伴うカルパイン活性制御不全の機構解明

文献情報

文献番号
200400314A
報告書区分
総括
研究課題名
老化に伴うカルパイン活性制御不全の機構解明
課題番号
-
研究年度
平成16(2004)年度
研究代表者(所属機関)
遠藤 玉夫((財)東京都高齢者研究・福祉振興財団 東京都老人総合研究所 糖蛋白質研究グループ)
研究分担者(所属機関)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 長寿科学総合研究
研究開始年度
平成14(2002)年度
研究終了予定年度
平成16(2004)年度
研究費
4,900,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
klotho変異マウスの腎臓と肺ではμ-calpainが異常に活性化され、その内在性阻害物質であるcalpastatinが消失している。こうしたcalpainの活性制御の異常が、細胞骨格系の分子を分解し、組織の正常な機能を損ねている可能性が考えられる。
calpainは細胞内カルシウム濃度の上昇により自己消化を起こし活性化することから、klotho変異マウスでは細胞内カルシウム濃度調節の異常があると予想される。そこでklotho蛋白質と細胞内カルシウム濃度調節機構との関係を検討した。
研究方法
1)テトラサイクリン誘導型のsiRNA発現ベクターを作製し、klotho遺伝子の発現を制御する実験システムを構築した。2)半透膜で培地を上層と下層に区切った培養器を使用し、半透膜上で細胞を培養する方法により以下の実験を行った。klotho遺伝子の発現に影響することが知られるアンジオテンシンIIとビタミンD3で細胞を処理し、上層あるいは下層に45-Caを添加し、上層-下層間のカルシウム流動量と細胞内カルシウム濃度の変化を45-Caの放射活性により測定した。
結果と考察
siRNAの発現誘導およびアンジオテンシンIIの添加により、klotho蛋白質の発現の減少が観察された。一方、ビタミンD3の添加では、klotho蛋白質の顕著な発現増加が観察された。そこで、45-Caを添加し30分間におけるカルシウム流動量を測定した。アンジオテンシンIIおよびビタミンD3添加の両方の場合において、添加しない対照細胞に比較して、上層-下層間のカルシウム輸送が亢進することが明らかとなった。また、カルシウム輸送の亢進に伴って、細胞内カルシウム濃度も上昇する傾向があることが分かった。siRNAによるklotho蛋白質発現抑制の影響については現在解析中である。
結論
klotho蛋白質の発現量と腎尿細管細胞におけるカルシウム輸送には密接な関係があることが明らかとなった。カルシウム輸送量の増加にともない細胞内カルシウム濃度も上昇することから、klotho変異マウスや自然老化マウスにおいてklotho蛋白質の発現異常が長期的に続く場合、細胞内カルシウム濃度が持続的に上昇することで、μ-calpainの活性化が誘導されている可能性が考えられる。

公開日・更新日

公開日
2005-04-11
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

公開日・更新日

公開日
2006-02-20
更新日
-

文献情報

文献番号
200400314B
報告書区分
総合
研究課題名
老化に伴うカルパイン活性制御不全の機構解明
課題番号
-
研究年度
平成16(2004)年度
研究代表者(所属機関)
遠藤 玉夫((財)東京都高齢者研究・福祉振興財団 東京都老人総合研究所 糖蛋白質研究グループ)
研究分担者(所属機関)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 長寿科学総合研究
研究開始年度
平成14(2002)年度
研究終了予定年度
平成16(2004)年度
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
急激に高齢化が進む日本において、高齢者を疾患から守り、高齢者の生活の質(Quality of life)を高くすることは現代医療の最重要課題の一つである。近年、単一遺伝子欠損により、ヒトの老化症状に類似した多彩な症状を呈する変異マウスが作成され、その原因遺伝子としてklothoが同定された。このことから、klotho遺伝子の機能を解析することで老化や老化関連疾患の分子機構を理解するための重要な知見が得られることが期待される。
研究方法
1) klotho蛋白質の機能を知るための最初のアプローチとして、klotho遺伝子の変異による蛋白質の発現の変化をSDS-PAGE等の手法で解析した。2) calpainの活性型と非活性型を区別する抗体を作製し、klotho遺伝子の変異や老化とcalpain活性化との関係を解析した。3) 細胞を半透膜上で培養し、45-Caの放射活性を利用して上層-下層間のカルシウム流動量と細胞内カルシウム濃度変化を測定する方法を用いて、内在性にklotho蛋白質を発現している細胞に、アンジオテンシンIIなどでklotho蛋白質の発現を変化させたときの影響を調べた。
結果と考察
1)klotho変異マウスの腎臓と肺ではαII-spectrinが著しく分解されていることを見いだした。2)変異マウスにおけるαII-spectrinの分解はμ-calpainの異常活性化と内在性阻害物質であるcalpastatinの消失が原因であることを明らかにした。さらに、自然老化マウスの解析から、老齢マウスでもklotho蛋白質の減少とμ-calpainの活性化が観察された。3)calpainの活性化はカルシウム依存的であることから、klotho蛋白質と細胞内カルシウム濃度の関係を検討した。アンジオテンシンIIの添加により腎尿細管細胞のklotho蛋白質の発現を減少させたところ、細胞のカルシウム輸送が亢進し、細胞内カルシウム濃度が上昇する傾向が示された。
結論
klotho遺伝子の変異や加齢によるklotho蛋白質の持続的な減少は、細胞内カルシウム濃度を上昇させるとともに、μ-calpainの異常活性化とcalpastatinの消失を起こすことが明らかとなった。μ-calpainによる蛋白質分解反応の亢進が腎・肺障害等の老化関連疾患の要因となっていることが考えられる。

公開日・更新日

公開日
2005-04-11
更新日
-